感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
袖崎いたる
3
著者のドイツ中世の知識やヨーロッパ滞在の思い出と日本文化とを比較したり、社会事情に対して所見を述べているエッセイ。勉強になったのは「「怖れ」の変化」の文章である。著者が主張する「賤視」の概念の補強として、森や山、河川や死に対して感じる根源的な畏怖があり、それは子供が暗闇に恐怖を覚えるようにして、人に感得されるものなのだとし、悪魔や伝承や怪物にいっそうセンシティブであった中世の人にとってはそうした恐怖を覚える領域に働く人には畏敬を覚えるのだ、だから賤視は成り立つのだという論理には説得力があった。2015/05/21