内容説明
故・石垣りんの未刊詩40篇。
目次
レモンとねずみ
契
春
虹
パラソル
たんぽぽ
恋人
なのはな
なかよし
シコタマ節〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
107
石垣りんさんの未発表の作品を集めた詩集。強い怒りと諦観の間で揺れ動くような詩が多い。例えば「やさしさ」は優しい言葉遣いながら、人の命を奪ってしまう戦争に対する憤りが感じられる。「私の日記」のように日本の社会で生きるやりきれなさを描いた詩もある。重たい詩が多いのだが、透明で研ぎ澄まされた表現が使われているので、読んでいて清々しい気持ちになれるし、詩人としての凄味を実感した。一番好きな詩は「墓」だった。この詩には怒りや諦めを突き抜けた優しさと懐かしさがある。日本人の魂が帰っていく場所が淡々と描かれている。2018/04/25
tokotoko
27
この夏は読友さんに教わって、詩の本を何冊か読んだ。女性の詩は初めてだ。石垣りんさんと10年の付き合いがあった編者が選んだ40編。生活に密着したテーマで、一つ一つの詩にりんさんの意志がしっかりと刻まれる。優しく、そして強い。ダメなものはダメ、つらいことはつらいと、はっきりと伝わってくる。恵まれない境遇で育ち、ご苦労も多かったと、巻末に寄せられた谷川俊太郎さんと茨木のり子さんの弔辞から知った。優しい丸顔と快活な笑顔だったそうだが、中にこんなにたくさんの気持ちを包んでいたのか。その懐の深さにただ頭が下がる。2013/08/29
二戸・カルピンチョ
26
生きることの苦しみが詩を書くことへ向かわせた。やさしさと義理の間で自分を見つめ社会を見つめ、現実の家族を見つめ。2023/05/18
糸遊
13
石垣りんの詩を読むと、自然と背筋をきりりとなる。くらしという生活苦が蠢いていて、おそろしくなる。時代のせいもあるだろう。境遇のせいもあるだろう。しかし、石垣さんの詩はまっすぐで、言葉は誰に対しても手厳しい。この詩集には石垣りんを偲ぶ谷川俊太郎と茨木のりこの弔辞もある。二人が敬愛していたのかがよくわかるようだった。2014/03/09
らじこ
12
どの詩が特別好きとか、そういうのはなかったんだけど、この人の書く言葉の音や、辛辣で生々しい表現、そのなかにあるオチャメな部分、そういったものがとても面白かった。音の流れは洗練されていてまとまりがよく、ころころところがるように流れていく。匂い立つような生々しい表現の裏には戦争体験者であることを物語るかのような時代背景が見え隠れし、興味深い。2013/08/01