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内容説明
オランダ現代文学の気鋭J・ベルンレフが、アルツハイマー病の男の心象を、一人称で描ききった異色小説。オランダで40万部、英国マインドブック賞に輝き、10カ国語以上に翻訳された世界的ベストセラー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ともち
13
『実験する小説たち』紹介本⓵ オランダ人作家の約20年前の訳本。アルツハイマー病に侵されていく主人公のつぶやきで語られていく日常。過去と現在の記憶が混在していく。傍らにいる妻が悲しそうな顔をする。でもその原因が自分だとはわからない。 わが家族の一人も徐々にそうなりつつあるので他人事ではない。それに自分自身も将来そうなる可能性も否定出来ない。心の準備のためにも読んで良かった。2017/03/29
おおた
8
アルツハイマーで記憶をなくしていく男の一人語り。『アルジャーノン』と異なり、語彙をさほど失わないのが意外ではあるが、ともかく記憶が混濁していって周囲の反応を察知できなくなっていき、ついには病院で記憶の断片を呟き続ける。50年連れ添った妻を母と勘違いし、愛する犬がいたことも忘れてしまう。認知能力がひたひたと沈んでいき、己を失う恐怖は一読の価値あり。2013/03/23
やまはるか
5
アルツハイマー病の主人公を一人称で語る困難に挑んだ作品。「間違った言葉を使うと間違った考えに行ってしまい間違ったことをする」「唇を動かせ。そうすれば言葉が戻ってくるだろう」「人間は言葉で作られているはずだ。まるごと。言葉を供給しなければならない。それによって急場はしのげる、ストーリーだ、供給だ、ストーリーの導入だ」今私が脳の中で操っている言葉、私の脳を動かしている言葉が混乱したり、失われたりしたらどうなるかは明らかだ。そのようにして読む者の主観に訴える稀有な物語となっている。2019/12/28
コウ
2
とても印象的で美しい小説です。アルツハイマーに侵された老人の心象風景が静かに綴られてゆきます。その記憶がまた愛しいのです。失われていく記憶……。訳者の枝川公一さんは素晴らしい書き手ですが、残念ながらこの本はジャンルが違ったように思います。是非とも柴田元幸さん訳で読んでみたい本です。作品としてはパーフェクトですが、訳が残念なので★★★☆☆2008/06/19