出版社内容情報
『朝日新聞』-2003年2月23日付書評より
「中世から十九世紀半ばまで、なぜヨーロッパの貴族たちは特権を持ちつづけられたのか。王権、議会、他の身分との関係とともに、淡淡と記述されている。特権は多岐にわたる。.......本書は、大半が中流意識をもつ日本人が、今なおエリート主義を濃厚に留めたヨーロッパ社会を理解する上で、大いに裨益するだろう。」
内容説明
本書は、「ヨーロッパの貴族」とはどのような存在なのかを、時間的・空間的な意味でのヨーロッパ全体を視野に入れて、検証しようとするものである。
目次
第1章 概論―貴族の特権とは何か
第2章 財政上の特権
第3章 司法、奉仕義務、および領主支配に関する免責特権
第4章 政治参加の権利
第5章 名誉をめぐる特権
第6章 領主権
第7章 地主としての特権
著者等紹介
指昭博[サシアキヒロ]
1957年大阪府生れ、1981年大阪大学文学部卒業、大阪大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学、現在神戸市外国語大学教授
指珠恵[サシタマエ]
1962年兵庫県生れ、1985年大阪大学文学部卒業、大阪大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学
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感想・レビュー
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人生ゴルディアス
3
何度本を読んでも、雲をつかむような頼りなさしか得られない、「騎士」や「貴族」の概念。本書は貴族とは「特権」によって支えられる物であり、その「特権」の手に入れ方は様々である、とする。しかも平民が金でなにかの特権を買っても、必ずしもそれで貴族になれるわけではないというのがなおややこしいが、なんとなく雰囲気はわかってきた。たとえば特定の土地には様々な特権が歴史的に付随していて、そこを手に入れれば自動的になんとか卿と呼ばれるようになるとか、王の戦に従事して武功を立てて何かの特権を賜れば貴族位のある騎士になるとか。2018/12/14
takao
2
法で定められた特権を行使。2023/05/09
水無月十六(ニール・フィレル)
1
中世後期から近代(主に近代)にかけて、ヨーロッパの貴族とは何かについて書かれた本。貴族はその特権によって貴族たらしめられていた。ただ、平民もなんらかの手段で貴族位を得ることは可能であり、貴族の中でもさらに階層があった。貴族制が民主主義を誕生させたという記述は興味深く、貴族についてのイメージが少し変わった。富裕層が貴族とは限らず、貴族と言っても貧乏な貴族もいるし、貴族所領を持っていない貴族もいたというのだ。フランス革命は特権の優位性に対する運動だったという点なども面白かった。もう少し広げて読みたい。2016/01/25