内容説明
あらゆる図像は元来、ヒトの眼と脳とが合作した世界夢であった。しかしこれまで、ヒト自身の〈真実〉を活写する解剖図譜にそれを探ろうと思い立った人はいなかった。人骨はこの5万年変化せぬ、しかし人骨の図版は2千年のうちに千変万化した、と著者は述べる。謎を解く鍵は何か?骨図の裏にあるヒトの眼と脳との変容である。ここに最も劇的な視覚の冒険が生まれた。
目次
第1章 瞬間と永遠―視知覚形式の時間論(死体にハエが止まっているのはなぜか;輪郭線はどこにあるか;『解体新書』付図の場合;ヒトの視知覚形式;平面的と立体的;「瞬間」の象徴としてのハエ;骨の図のその後と将来)
第2章 全体と部分―西洋解剖図の歴史(初期解剖図;レオナルド・ダ・ヴィンチ『解剖手稿』の特異性;レオナルド・ダ・ヴィンチの影響;アンドレアス・ヴェサリウス―解剖学の集大成;ヴェサリウスの亜流;現代の解剖図に至る流れ)
第3章 アンドレアス・ヴェサリウス―スケルトンの謎
第4章 骨と骸骨―美と科学の交点(ヒトは骨をどう見たか;江戸の学者;日本の骸骨;骸骨の絵の系譜―ヨーロッパとその他の地域)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
午後
2
骨格図や絵画の中の人骨の描写を通じて、人が骨をどのように見てきたかを分析する、面白い試み。ヴァニタス画や九相図に見られるような、寓意としての死と、解剖学的な分析の対象となるモノとしての骨の描写の違い。言及されている作例が、西欧だけでなく日本、中国、インド、メキシコと幅が広く、知らないものも多くあって面白かった。ほとんど作品紹介のような内容だが、冒頭で提示される骨格図の描写の変遷と、人間の視覚制度の関連についてもっと掘り下げたらとんでもない本になりそう。2022/03/17
Meroe
1
古今東西の解剖図から「ヒトは骨をどう見てきたか」をつまみ食い。モノとしての骨と、死の象徴としての骨。os, bone(個々の部品)としての骨と、skeleton(骨格)としての骨。解剖図の歴史が詳しくわかるわけではないが、図版がたくさん、しかも使い方がうまくて楽しい。表現の仕方(陰影か輪郭線か)にはもっと踏み込んでほしかった。江戸時代に刑死体を煮て骨格標本が作られ、さらにそれを模した木製の骨(木骨)が作られていたとは。あと表紙のレンブラントの絵にはなぜか本文中で言及はない……。2012/04/27
茨木
0
最初が「死体を探せ!」のデジャブすぎて凹んだ。図が多くてわかりやすかったしメモを取った単語も結構あって最終的には読んでよかったと思えた。装丁も格好いい。2009/08/05
ファーストフラッシュ
0
第1章輪郭線とハエ 第2章ダビンチの焦点・何を見ないか 第3章 還元主義の結合による全身骨格 第4章 仏教思想からくる無常 後記 限りなく透明に近いブルー2018/02/12