出版社内容情報
アイヌ民族の伝承文学の貴重なモニュメント●かつて刊行された『アイヌ叙事詩 神謡・聖伝の研究』(1977年・岩波書店刊)に収載されたアイヌの故老・老媼から採録した神謡(Kamui-yukar)106編と聖伝(Oina)18編は、対訳・注解編であり、その刊行時に、現代訳をした「説話編」は割愛された。本書は、岩波版では原文のニュアンスを味読するには容易でなかった、これらの伝承文学を神話・説話として理解しやすく把握できるように編者が現代訳にした124編すべてを収録した。
【アイヌの神謡について】神謡は神々が人間の口を借りて、その身の上を自叙して歌う神話を内容とする叙事詩である。神謡の主体たる神も、汎神的な神々で、鳥獣・草木・日月・星辰あらゆるものがそれである。熊・梟・兎・狐・鯨・鯱等々も神であり、時に妖魔や化物さえも神と考えるので、およそ我々の神の観念とはかけ離れたものである。神謡の言語は、日常の口語とかなり違った古風な雅語で、一編毎に違った節調をもって歌われるが、それは「歌う」と「語る」との中間をいくような、あまり抑揚変化のない単純なものである。神謡は、短い言葉は声を伸ばして長めに歌い、長い言葉は早めに歌って、ほぼ四拍子に合う程度にそろえて歌うのである。
内容説明
かつて刊行された『アイヌ叙事詩 神謡・聖伝の研究』(1977年)では、アイヌの故老・老媼から採録した神謡(Kamui‐yukar)106編と聖伝(Oina)18編は対訳・注解編であり、現代訳をした説話編は割愛された。本書は、原文のニュアンスを味読するには容易でなかった、これらの伝承文学を神話ないし説話としての構成、大筋、場面の推移として把握できるように編者が現代訳にした124編すべてを収録した。
目次
1 神謡(火の媼神の自叙;兎の大将の自叔;兎の自叔;蜘蛛の女神の自叙;自叙神不明 ほか)
2 聖伝(アイヌラックルの自叙;小アイヌラックルの自叙)
アイヌ民族の歌謡―解説に代えて(久保寺逸彦)
著者等紹介
久保寺逸彦[クボデライツヒコ]
1902年北海道生まれ。1925年国学院大学卒業。1949年東京学芸大学教授。1960年『アイヌ叙事詩 神謡・聖伝の研究』により文学博士。1966年駒沢大学教授。1971年死去
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花子