内容説明
“盗作”の技術から、6ヵ月で完成でさせる法、テーマの絞り方、図書館の利用法、目録カードの実例…から、指導教員の選び方まで、審査の厳しいイタリアを例に、卒論・学術論文の作成方法を懇切に指導する。それ以上に本書は、世界的ベストセラー作家であり、記号論学者であるエコの創作と研究の秘密を垣間見せてくれる。
目次
第1章 卒業(博士)論文とは何か。何に役立つか
第2章 テーマの選び方
第3章 資料調査
第4章 作業計画とカード整理
第5章 原稿作成
第6章 決定稿の作成
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ラウリスタ~
11
ほぼ10年ぶりの再読。パノラマ的論文(野心的な若者が選びがち)ではなくモノグラフ的論文を(ただし、同時にパノラマ的視点を持つ必要がある)。研究範囲を極めて限定し、その内部に関しては全てを知ること。主要テーマと副次的情報を分ける(副次的情報の不十分さに審査員が難癖をつけないように)。(自分の)本には書き込もう(後で役に立つ)。コピーを取っただけで読んだ気になるな。資料調査やタイプ打ちについての記述はとっくに賞味期限切れだが、指導教員がいかに適切に研究テーマを提示するか、研究を限定するかという主眼において必読2021/10/29
greenman
8
本書は、Under Graduate から Post Graduate や Scholar をおもに対象とした、学術論文の指南書だ。 イタリア人であるウンベルト・エコが著述しているため、欧米での論文の作法(特に引用方法)となっているが、日本語でも本書のエッセンスは変わらない。とりわけ、引用の厳密さや資料の調査法に重点がおかれていて、論文を書くだけでなく、フォーマルな文章を書く際にも使えるテクニックがふくまれている。コメントに気になるポイントをメモしておきます。2010/02/17
viola
7
『薔薇の名前』のウンベルト・エーコが書いた論文の書き方の本です。対象は卒論をこれから書く大学生。一見大学生が読むとかなり難易度が高いと感じられそうですが、出来る限りエーコに近づいて、書いてあることをするくらいの気持ちでやるべきだと思います。6か月以内で書き上げた卒論なんて、絶対に勉強不足な卒論しか出来上がらないですもの。卒論とはいえ論文なので、院生や研究者が読むにも良し。先行文献が不足しているため、現代作家を取り上げる方が「必ず」難しいには同感。古典もオリジナリティー出すのに苦労しますけどね。2012/01/24
shostakovich
5
記述されている内容はタイトルのとおり「論文を書くための作法」だが、1年後に卒論を書くからといって慌てて読むようなものではなく、ライフワークとしてなにかの研究に打ち込もうとしている者が、これから先どのようなノウハウを身につけなければならないか、何をしなければならないか、その心構えを実践的に教えてくれる一冊と思ったほうが良いでしょう。締め切りが1年後の論文を書くためにもある程度は有用ですが、3年間よく勉強していて、かつかなり根気強い学生でないと使いこなすのは難しいかもしれません。1999/01/01
roughfractus02
4
博士論文作成マニュアルとして読まれる本書を裏から読みたくなるのは、データベースを縦横に踏破しながら攪乱し、その一方で鍵のかかったアーカイブに侵入する暗号を見つける方法が書かれてあるように思えるからかもしれない。おそらく、テーマの選択が打ち崩すべき標的の狙い定め方に、引用、敷延、剽窃の区別が原典、外典、偽書のネットワークの歴史に、記号表記の選択やギリシャ、キリル等文字のローマ字への転写法が暗号の復号に二重写しされるからだろう。「ゲーム、賭け、宝探し」としての論文作成という意味は、深読みするほどに実感可能だ。2019/01/21