内容説明
見世物は底抜けの芸や見る人の胸ぐらを掴むような演出を見せて消えて行く。その人たちと会えたことは私のささやかな勝利だ。まとうな世の中ではやってられない人たち、遙か彼方にいた異能者たちに会えた。旅はまだ続く。―芸大中退、見世物小屋、農業と遍歴し香具師(テキヤ)となった著者の半生。周縁の異能者を追う飴細工師の長い旅。
目次
1 見世物小屋の旅
2 百姓の旅
3 テキヤ一人旅
著者等紹介
坂入尚文[サカイリヒサフミ]
1947年生まれ。東京芸術大学彫刻科中退。飴細工師。見世物学会総務局長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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小鈴
14
「まっとうな世の中ではやってられない人たち、遥か彼方にいた異能者たちに会えた。旅はまだ続く」と言う著者は芸大彫刻科を中退し、蝋人形館の見世物や飴細工のテキヤとして、廃れゆく世界の中で細々と生きていく。全国を回っているはずなのだが、北海道の高市の話が多く、道内の埋もれていく廃屋と重ね合わせてしんみり描いていく。また、東藻琴や小樽の入舟の情景はその近くに住んでいた身として何かつまされるものがあるのだ。2015/11/10
sayzk
10
若い頃からテキ屋、ドサ回り役者なんぞをやっていたのではなく、美術屋畑から三十前後で友人と見世物小屋を立ち上げた著者。その後田舎に籠ったり、テキ屋になったり辛そうでもあり、楽しそうでもある人生。 同じ新宿書房の安田里美の本とまた視点が違う。 安田さんの本は真偽のほどはさておき、見世物にドップリの迫力。自分では真似したくない。本書は紀行文的な感覚。少し憧れ、真似したくなってしまう。もう、私の歳ではもう真似できないけどね。2020/08/14
豊花泉ほうかせん
4
知らない世界を 垣間見れた感じの本です。2013/11/28
ぽこほと
2
日本が元気で戦後を引きずっていた時代のテキヤ稼業のノンフィクション。親分、兄弟分、姐さん、アイヌ、朝鮮人。辿り着いたところで生きていく人たちや事象をスケッチするように淡々とした文章で描写している。全小屋の代表が事務所に集まって1日の売り上げを数える勘定の儀式(?)は緊張感が凄い。寅さんの様に気ままに生きられるほどテキヤの世界も楽ではなさそうだが、閉鎖的な村社会もかなり恐ろしい。。2021/05/01
technohippy
1
ずっと物悲しくて猥雑な話が続くのに、読み終わると何か綺麗なものを見た気持ちになる。よい本でした2022/07/12