内容説明
「目を大きくみひらき〈光〉の中に歩みいでよ」。近代啓豪主義の至上命令のもと、時代の「光学」―ガラス、ファンタスマゴリア、パーラー・アクアリウム―がいざなう錯乱する視線の領域。科学が脱魔術化される直前の疑似知の雑嚢を切り開く高山幻想文学論の精髄。
目次
第1章 豪奢にも幻
第2章 ぶきみなるもの
第3章 超偏愛的
第4章 〈宏〉の時代
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
17
啓蒙主義とロマン主義を繋ぐ、合理性の支配の裂け目に現れた自他の境界を浸食するようないかがわしいもの。メスメリズム、幻燈、博物的収集の狂気など時代の闇の層に属するそれ自体が幻想感覚を呼び起こす事象について縦横無尽にして語る幻想文学論であり、また、天使や悪魔的なものを充満する世界の中で彼岸と此岸を繋ぐ媒介項と見立て現代にまで射程を広げたメディア論でもある。そこに著者自身が系譜に連なる澁澤、種村といった先駆者へのリスペクトに荒俣宏との長大な対談まで収録されていて相変わらず読み応え抜群、本書自体が実に幻想的である2016/02/25
∃.狂茶党
2
文学の枠組みを逸脱した、幻想文学論。渋澤の系譜におられる方には興味深いことと思います。天野可淡についての記述で、ふと、町田ひらく作品の少女の眼差しが思い浮かんだけど、この作家を、高山宏は(あるいは澁澤龍彦は)どう読むのだろうか。久しぶりの高山宏でしたが本書はとても読みやすい。2020/01/10
Akito Yoshiue
1
荒俣宏との対談が最高だった。2014/02/06
euthanasia
0
「天使」という<メディア>、つまりメディアはポストモダン社会特有の事象ではなくて大昔からあったんだ、ってことが言いたいんだろうけど、それは後付けの論理というか結局現在の事象や言説を過去に投影してるだけであって、ニューアカへの批判のつもりが結局ニューアカへの従属という結果に陥っている。なんだかんだでこれもそういう意味で一種のニューアカ本なのだ。よくも悪くも虚仮威し、今読むには到底耐えない。2012/06/18