内容説明
幕末、生糸で財をなした中居屋重兵衛。その関係文書を大量に所蔵する中山文庫主人・中山信夫。著者が中山文庫の様々な史料の真贋をつきとめていくうち、この巨大で劇的な生涯を送ったとされる豪商の歴史的実像は幻と化す。史料は偽作か。ならば誰が何の目的で作ったのか。そして中山信夫とは何者か。ミステリアスで刺戟的な知のノンフィクション。
目次
第1章 川崎のアパートで
第2章 横浜の岩亀楼跡で
第3章 草津のらい治療院で
終の章 水戸支藩の松岡城址で
真贋・余波
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
フゥドゥ
0
実在の商人と実在の思想家を結びつける、虚構の紐帯。 げに恐ろしきは真贋判断と「見たいものしか見えない」という人の性質だろうか・・・2014/11/22
冬至楼均
0
人は誰しも自分の信じたいモノを信じる。一度信じてしまうとなかなか転向できないのだろう。2012/03/23
小心
0
水戸藩家老・中山備前守の末裔を名乗る人物が繰り広げる妄想に巻き込まれる高名な研究者の方々。次から次へ現れる怪しげな史料。「貴重な資料」「門外不出」という言葉は魅力的なんだろうなあ。主婦が「期間限定」「残りわずか」という言葉にクラクラしてしまうのと一緒かな。中居屋重兵衛さん、嬬恋村出身で横浜開港の功労者で、でも没落して麻疹で亡くなったらしいけれど、それだけで充分魅力的で濃い人生だと思う。病気治療で生き神さまと讃えられた、なんて追加エピソードはいらないのにね。2021/04/29