内容説明
何の見返りも求めない贈り物は魂と魂のあいだにエロティックな通路をつくりだす。宮沢賢治にとって「修羅」とは自然からの、さらに自然への、そうした贈与の豊穣だった。そして人と自然をいつくしみ、ほがらかな前衛性と純粋さの王国「東北」もまたエロスの大地なのだった。東北と賢治を再発見し、「東北的」なるものの可能性を拓いた魂の唯物論。
目次
1 賢治のあいさつ(贈与する人;四次元の修羅―高橋世織との対話;ダルマがあいさつするとき―小林康夫との対話;過ぎ越しの賢治―聞き手・牧野立雄)
2 踊るみちのく(みちのく男の世界;ポストモダンと現代農業;踊る農業、踊る東北―森繁哉との対話)
エピローグ ヨーロッパ思想の東北
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaz
2
半端なく面白かった。解説でも言われているように、この本全体が音楽のようでもあった。何度も繰り返し味わいたい本。物語は元来、騙りの意味であり、だまし、うっとりさせ、夢見心地にさせて、現実から片時離れさせることのできる技術。肉体という現実から離れられないのはわかっていてもなおも高次元の存在を感じさせる技術。宮沢賢治を読みたくなった。2019/09/13
ぷー
1
宮沢賢治の作品や半生における彼の機械的な思想や唯物論的思考を様々な識者との対談で紐解く。一見ファンタジックな宮沢賢治作品が、彼がいかに科学や物理への関心に基づいているかがわかる。賢治の、「作品は自然から贈与されたものである」という賢治考えかたも中沢が頻繁に取り扱う主題とも通じている。 また修験道の修行における女人禁制解除にまつわりながら、修験道の本質が分かりやすく書かれており、興味深かった。
月光密造者
0
人生初の東北行きを前に再読。時代性もあるのか観念性への傾きが強い気もするが、宮沢賢治や舞踏家の森繁哉を軸に地域性や習俗を読み解こうとする試みは刺激的。2012/08/24
Takumi Fukuda
0
オウム肯定で有名な宗教学者。 著者自身がチベット密教の修行経験者ということで、宮沢賢治を宗教的目線から新しすぎる観点で捉えています。 後半の修験道や東北のあり方についての話はなかなか楽しめました。 東北の地理的・精神的あり方に独自の見解を示しています。 一言で言うと「東北はエロい」んだそうです(笑) 著者が観念の世界を重視しすぎているので、少し離れた目線から読むならなかなか良い本だったんじゃないかなーと思います。だけど人には絶対薦めません。難しすぎる。 2010/07/20