感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
217
時にはバリで、またある時はジャマイカで、今どきの恋を軽やかに語った９つの短篇物語。一種の風俗小説だとも言える。ただ、「今どきの風俗」のはずが、実は２０年以上も前に書かれていた（１９９２年の出版）のはちょっとした驚きだ。一向に古びた様子がないのである。とすると、これらは単に風俗小説の域にはとどまらないということになろうか。内容は、いずれも「恋多き大人の女」の奔放な恋の物語だ（表題作はいくぶん例外的だが）。著者は、あとがきに「皮膚の上に宿らせる恋の記憶」と述べるが、まさに山田詠美の縦横無尽という短篇集だ。2015/05/15
夢追人００９
144
山田詠美さんの著者曰く大人の男と女の不慮の事故を描いた恋愛短編集ですね。本書に描かれる男女の愛は自由恋愛という感じでオンリーユーではなく不貞行為も含んでいますが、でもそれ程に自堕落ではなく筋は通っていてエロティックでもイヤらしくもなく心理描写が中心ですので艶っぽい性愛描写を期待された方にはやや物足りなかったかもしれませんね。私のベストは年上女の去り際の苦悩と奇跡の愛の復活を描いた「ピンプオイル」ですね。本書を読んで私も情熱を枯らす事なく一生現役バリバリでいたいなと思いましたが但し皆様不倫だけは駄目ですよ。2019/09/28
絹恵
38
目を隠せば口が甘く鳴き、口を塞げば目が熱を帯びるその反応に抗えないのは、何よりそれが心を呼んでいると気が付いてしまったからなのだと思います。だから瞬間に不安も戸惑いも捨て、破裂しそうな心を溶かすのです。貴方の渇いた心を濡らすために。でも私たちは知っています、甘い灰が降る夜が明け、泣けない朝が来ることを。 2017/09/07
冬見
15
皮膚で恋をするかわいい女とかわいい男。抹消の奴隷たちの不慮の事故。隅から隅までエイミー。満喫した。特に好きな話をピックアップする。◆「ピンプオイル」エレガントな所作はすべて仕込まれたはずなのにエレガントな別れ方だけは知らない男。かわいい。「HER」恋の始まり。言葉は一つで十分だった。その一つの言葉のために生きてきた。「前夜祭」愛すべきギャンブラー。魔法をかけた男に賭ける女に拍手を。「個人の都合」けなげな奴は早死にしてしまうんだ。「口と手」終わらないために始めなかったはずなのに始まってしまった。2021/12/14
Yuki Ban
11
以下は恋人以上の関係にある前提のお話です。 男が女に面倒くさいと言うとその関係が終わると思います。同様に男がこの作者に「めんど…」と言った瞬間、股間をナイフでグサリといかれ命が終わると思います。 僕は読みながらずっと謝罪をしていました。そんなにアレコレ考えて行動していません申し訳ございません。そんなにあなたみたいな精巧に作り込まれた感性の細やかなヒダヒダを持ち合わせておりません申し訳ございませんetcetc…。 10〜30ページで終わる短編の集まりで助かりました。作者のモラルは僕にとってとても重いのです。2019/12/23
