内容説明
この作品にはゴールディングのすべてがある。ロンドン大空襲の業火に半身を醜く焼かれた少年は、神の啓示を熱願する預言者となり、愛を知らぬ美少女は、廉恥を捨て去り邪性を希求する妖女と化す。日常を貫通し、善と悪の両極限へと突き進む光芒と闇路―救いはあるのか?ノーベル賞作家が渾身の力で描く入魂の現代黙示文学。
著者等紹介
吉田徹夫[ヨシダテツオ]
福岡女子大学文学部教授
宮原一成[ミヤハラカズナリ]
山口大学人文学部助教授
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感想・レビュー
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hoiminsakura
5
久々に蝿の王を再読して以来、未読であった後継者たち、ピンチャー・マーティン、尖塔、自由な顚落、我が町ぼくを呼ぶ声、と書かれた順に読んできて、人間の心の闇を描き続けてきた作者がこの作品で初めて題名に「闇」を入れた。原題はDarkness Visible。聖書の引用や当時の文学、風俗などの注が多く解釈が難しい部分も多々あるが、今まで読んできた中で最もおぞましく奥深い闇を炙り出していると感じた。訳が直截的でなく理解し難い部分が犯罪紙一重の表現なのだ。だから「可視Visible」なのだろうか。私は嫌いではない。2022/11/01