出版社内容情報
アル中からの帰還、「失点」の日々-。ラッパーECDの書下ろし自伝的小説。「失点イン・ザ・パーク」「中野区中野1-64-2」の2編を収録する。
内容説明
アル中からの帰還、“失点”の日々―。ラッパーECDの書き下ろし“自伝的”小説。
著者等紹介
ECD[ECD]
1960年東京都生まれ。ラッパー
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
今庄和恵@マチカドホケン室/コネクトロン
5
無駄のない文章。書かれている内容はえぐいのにそれを感じさせないのは過ぎた出来事をもう昇華されているからか。ラップには疎いのだけど、ラッパーさんてみんなこんなに文章達者なのかしらねー。2017/09/05
4
「Jラップは死んだ、俺が殺した」とさんピンCAMPで絶叫した時、ECDが童貞だったという事実。37歳まで童貞で、初セックスの相手にはアル中になって逃げられるし、禁断症状で幻覚見て精神病院にぶち込まれたり、契約を打ち切られて職を探すためにハローワークに通って……私小説的においしいネタをそのままぶち込んだストロングスタイルは、久々にこういうものを読んだ満足感。基本的にECDて「頭が良い」人だから、もう一つの方の短編で幼年期のフロイト的な去勢恐怖を語っているところは「あざとく」感じだが、それもご愛嬌か。2017/08/02
フロム
4
なんたら文学賞を受賞していてもおかしくない内容。この人は基本的に文章が上手い。ちょっと自己愛の強さが鼻につくが、そこを差し引いても充分傑作。ちょっとしたきっかけでトラウマの原泉となってしまうのは因果だが バーターとして様々な分野に才能の得ているのは何ともいえない皮肉。 2012/12/11
滝ボーヨ
4
ECDの頭の中では「アル中」も「猫の出産」も「ドラッグ」も「定食屋」も全て同列の言葉として、均一な距離を持って扱われている。通常ならば事細かに描写すべきシーンや省略すべき些細な場面も全て大きな人生の流れの一部となって連なっていく。そこから生み出されるグルーヴからは独特の乾きを感じさせる。ECDはあからさまな善人でも悪人でも無い。社会の中にぼんやりと存在する、距離を失った点の一つとして呼吸を続けているのだ。しかしその寄る辺無さがこの上なく新しくそしてクールな文章感覚を立ち上がらせている。ECD、最高だ。2012/06/16
麦焼酎
2
アル中で入院、37歳で出来たはじめての彼女に振られる、音楽活動をしていた所属事務所からはリストラされるという失った男のどうしようもない自伝的小説。感性が女性っぽいなと思うところが多々ある。同じだめ人間でも西村賢太とは違って暴力振るわないし、喧嘩もしないし、働くし、女から金を借りないし、すごくまとも。もっと暴走しろ!と思いながら読んだ。結局酒を完全にやめたのかなー?癌で2018年に57歳で亡くなっているのね。国内ヒップホップ・シーンの黎明期から活動を続けてきた人らしい。2022/11/23