出版社内容情報
1960年代の「千円札裁判」体験を基にした表題作を含む、尾辻克彦名で発表した、メタ私小説の超傑作10編を収録。
赤瀬川原平[アカセガワゲンペイ]
内容説明
のちに「千円札裁判」へと至る若き時代を描く、封印されていた伝説の処女小説ほか、日本文学に「超私小説」の領域を拓いた天才の軌跡を辿る傑作群10篇を初書籍化。
著者等紹介
赤瀬川原平[アカセガワゲンペイ]
1937年3月27日、横浜市生まれ。本名・克彦。81年、「父が消えた」で芥川賞受賞。2014年10月26日、死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hirayama46
4
赤瀬川原平・尾辻克彦の単行本未収録作を集めた短編集。性質上、出来にはばらつきがある……かと思えばさにあらず、どの作品も読みどころの多いものが揃っていて、ことに「果し合い」「海部」あたりは私小説っぽい雰囲気を出しながらテクニカルな手法もふんだんに使われた、名匠による佳作といっていい作品だと思います。表題作もなかなか良かったのですが、過去の裁判あたりの事情を知っておくとより楽しめたのかな、と感じました。2023/03/13
tama
3
図書館本 赤瀬川ファンなので 「確かに小説だ」と思えるのは表題作だけ。使う言葉が凄い。螺子釘の海だもんな。で、他の作品はいつもの原平さんの、現実の記憶だか空想だかよくわからない、でも深刻にならないお話。「東京の乞食のまとうボロは汚いと思うが、レーピンの描いたヴォルガの舟曳人のは、霊的な光の塊として輝いている」。小学三年生の娘の胡桃子ちゃん「ガラス戸が開いて胡桃子のピンクの顔がコロリと飛び込んで来る」たしかに小学三年生コロコロしてるよ!表現者って凄いなぁ。2017/08/02
yutaro sata
2
赤瀬川さんの現実への接近ってなんか、どきどきしますよね。
Koki Miyachi
1
赤瀬川原平の日の目を見なかった短編集を死後に再編集した本らしい。今イチ作品なのかというと、さにあらず。千円札裁判に繋がる千円札模型制作の体験を作品化したメタフィクショナルな作品から、日常の脳内会話的なカジュアルな作品まで盛りだくさん。筆者の独特なユーモア感覚と知性が通底していて、うふふと思わず微笑んでしまう魅力がとても良いのデス。2021/07/30
よだみな
1
『果し合い』より 駅に着いた。私は切符販売機に百円玉を入れてボタンを押した。もう一つ百円玉を入れると、胡桃子はそれを見てから「こども」という薄いプラスチックの蓋を上げて、その下のボタンを押している。 なつかしい…2021/03/20