内容説明
1932年2月、上海事変に際し廟巷鎮で、突撃路を開くため破壊筒をかかえて鉄条網に突っ込んだ三人の工兵―作江伊之助、江下武二、北川丞―は、敵陣に運び込んだ爆弾とともに「天皇陛下萬歳」の一声を残し、自らの身を散らせた。世にいう爆弾三勇士である。彼らを軍国主義日本はいかにして神様に仕上げたのか。それによって何をしようとしたのか。いや、そもそも彼らは本当に「天皇陛下萬歳」と言ったのか。彼らはなぜ“軍神”ではないのか。そして、彼らのなかに被差別部落民がいるという心ない噂はなぜ民衆に広がったのか。―これらの疑問の底から“いわれなき神”と“いわれなき死”という日本人の思想の根を掘り起こす渾身のノンフィクション。待望の復刊。
著者等紹介
上野英信[ウエノエイシン]
1923年山口県生まれ。本名・鋭之進。旧満洲・建国大学在学中に現役招集、広島で被爆。敗戦後京都大学に編入学するも卒業間近で中退。日炭高松炭砿、三菱崎戸鉱業所等で坑夫として働きながら文学活動を始める。1958年より谷川雁、森崎和江らと共に「サークル村」を発行。64年福岡県鞍手町の廃炭住に住居兼資料館の「筑豊文庫」を開設し、以後炭鉱離職者、部落差別、朝鮮人問題等についてのルポ、記録に取り組む。1987年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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