出版社内容情報
戦国大名を悩ます犯罪やトラブルの数々がリアルタイムに記された戦国法「塵芥集」を片手に、戦国乱世の現実を実感しながら、史料読みの面白さも同時に体感できる、臨場感たっぷりの新手の歴史入門書!東大・明大の授業でも教えない秘
目次
戦国法の魅力
1 犯罪者をつかまえろ(山の世界は無法地帯?―アジールへの挑戦1;家宅捜索のあの手この手―アジールへの挑戦2;被害者が犯人をあげろ!―自力救済と当事者主義1;犯罪者を成敗せよ―自力救済と当事者主義2)
2 売買のトラブルはゆるさない(土地の安堵と売買のいさかい―買地安堵状の効果;売買契約の機微にふれる―年季売りと本銭返しの実像;下人の身売り―ループする下層民の生きざま;質屋の故実)
3 立法の情報ソースをさぐる―原「塵芥集」をもとめて(「御成敗式目」と「塵芥集」;「塵芥集」の先行法令はあったか―「式目」以外の原典;稙宗を悩ますさまざまな出来事)
4 戦国大名の夢のあと―伊達稙宗と桑折西山城(伊達家の本拠西山城を訪ねる;西山城と伊達領の景観;稙宗の夢のあと)
著者等紹介
桜井英治[サクライエイジ]
1961年生れ、東京大学大学院総合文化研究科教授
清水克行[シミズカツユキ]
1971年生れ、明治大学商学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
浅香山三郎
14
2014年刊なので2年位積ん読にしてたといふことになる。こんなに面白いなら、まう少し早く読んでおけばよかつた。桜井さんと清水さんといふ、鋭く面白い議論をいつもなさつてゐる二人が伊達稙宗の不思議な法感覚に翻弄される。かういふ風に対談形式だからこそ面白く、対話だからこその優れた中世法の「意訳」や「翻訳」が可能となつた。Ⅱの「売買のトラブルはゆるさない」は特に面白く、中世人の経済観念に通じた桜井さんの冴へがみられる。子孫の綱村によつて再発見される迄、稙宗の事績も塵芥集も忘れ去られてゐたといふのは意外な気がした。2017/04/10
MUNEKAZ
6
『塵芥集』をネタに、桜井先生と清水先生が史料読みの面白さを伝えてくれる一冊。ものすごく硬派な内容になりそうなところも、対談形式のおかげかスルスルと読める(気がする)のがありがたい。歴史家の思考法というか発想のプロセスが垣間見えて興味深いし、ときに「わからない」と正直に認める誠実さも感じられて面白い。また分国法を通して語られる伊達稙宗のキャラクターも、なかなか味わい深いものがあった。2018/09/08
娑婆乃呼吸
2
桜井英治氏と清水克行氏による、伊達稙宗が制定した『塵芥集』を対談形式で読み解いていく史料読みのリアルを綴った一冊。 「この解釈じゃだめか」「これは分からない」など研究者がどのように史料にあたっているかを対談の聞き手になった気分で読めて楽しいです。 伊達氏については詳しくないのですが、後に息子の晴宗と対立し、天文の乱で敗れる伊達稙宗という人物のキャラクターが垣間見られる本にもなっています。2022/06/27
楽
2
「戦国法を読む」のですから、自力救済や当事者主義といった最低限の歴史・法律知識は必要です。 勝俣鎮夫氏などの先行研究に目を通しておくに越したことはありませんが、本書は『塵芥集』の全条文を整合的に解釈するのが本旨ではありません。 歴史や法律の専門家がガチガチに解釈するのではなく、条文に触れる中で「乱世の現実をリアルに実感」すること、「史料読みの楽しさを体感」することが本旨ですから、まずはわかるところからその楽しさを味わうことがいいのではないでしょうか。2015/08/01
in medio tutissimus ibis.
1
一つの資料の中から、刑事事件の専従職員も捻出できない司法行政能力と、山の中まで威光を及ぼそうという志向が浮かび上がってきて、伊達稙宗と言う人のアンバランスが伺える。分不相応だったと言うべきか、未来を先取りしようとしていたというべきか。稙宗失脚とともに塵芥集も闇に葬られたが、そうはならなかったらどうなっていただろうと想像を巡らせると楽しい(当事者にはたまったものではなかったからこうなったのだろうが)。第四章は両人が実際に史跡をめぐって思いを巡らせるブラタモリの趣。巻末の地図に辿ったルートも示して欲しかった。2019/02/08