内容説明
手塚治虫、石ノ森章太郎、藤子不二雄、寺田ヒロオ……。漫画史のその名をとどろかせた「トキワ荘」アパートの住人たち。長谷邦夫と赤塚不二夫もこの中にいた。その後、長谷は赤塚のブレーンとして、また、ある時はゴーストライターとして、陰になり、日向になり支え続けた。赤塚不二夫という天才漫画家の「光と影」を見事に描ききった秀作。
目次
第1章 漫画少年たちの夢と挫折
第2章 事件はトキワ荘で起きていた
第3章 フジオ・プロの大躍進時代
第4章 ナンセンス&パロディ時代を奔る
第5章 無鉄砲無責任時代の光と影
第6章 狂騒の陰で忍び寄る翳り
第7章 天才の孤独と憂鬱
終章 手塚治虫の死、そして赤塚との訣別
著者等紹介
長谷邦夫[ナガタニクニオ]
昭和12年、東京生まれ。漫画史上伝説として知られるトキワ荘メンバー。貸本漫画を執する傍ら、同33年、SF同人誌「宇宙塵」に入会、星新一、光瀬龍らと交遊する。同38年、石ノ森章太郎、藤子不二雄、赤塚不二夫らとともに、スタジオゼロに参加。筒井康隆原作「東海道戦争」の漫画化を機会にパロディ漫画を描く。同42年、フジオ・プロに所属し、赤塚不二夫のブレーンとして「ニャロメ面白シリーズ」などの制作に携わる。平成4年退社
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感想・レビュー
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hiroshi0083
4
商業高校二年生だった著者は、伝説の回覧誌「墨汁一滴」の東京在住同人であった赤塚不二夫と出会う。赤塚と交流を続けながら塩野義製薬に就職するも、その三ヶ月後のレントゲン検査で肺に影があったために退職するはめに。やがて、空いた時間を漫画執筆とトキワ荘への通いに費やし始める。その後、7年ほど貸本漫画で生計を立てていたが、赤塚に誘われてスタジオ・ゼロの雑誌部門へ勤務を始める。(コメントに続く)2019/08/24
戸田健太朗
3
まんが道では数コマしか登場させてもらえなかった赤塚不二夫の盟友である長谷邦夫。赤塚不二夫や石森章太郎と共に歩んだまんが道の栄光と没落。赤塚視点と石森視点に、この長谷視点を加えることで、より客観的に浮かび上がってくる。なにせ喧嘩別れのように袂を分かってしまった二人であるので、赤塚からは長谷の話は出ない。それだけに今となっては長谷の証言は貴重である。しかし長谷の視線はあくまでも赤塚に対する愛情にあふれているようにも思う。当時のフジオプロの内情についても、決して下品な暴露にはなっていない。2014/07/14
つれづれ
3
ずっと寝かせてあったが、今年必ず読まなければいけないと思い手に取る。赤塚の死を受けたタモリ、山本晋也等の悲痛ぶりが理解できた。しかし、「赤塚不二夫」という漫画家が、ここまで多くの人によってつくられていたもの(抽象的な意味でなく、実際の作品制作においても)だとは思いもしなかった。(ネットでは本書の記述に諸説が散見されるが。)しかし、記述は詳細にわたり資料的には貴重だが、文章がいまひとつなのが残念残念。2008/10/11
ぴょこたん
2
某BS番組で紹介された一冊。 トキワ荘のエピソードがふんだんに盛り込まれているし、 意外な有名人も出てくるので、70~80年代サブカルに興味ある方は必読の書です。 ただしタイトルに「叫んだ」とあるように、カタルシスだけでは終わりません。 それでもやっぱり「漫画好きなら読むべき」でしょう。2004/08/20
おーしつ
2
赤塚本は多数あれど初耳の話も多数(「東海道戦争」マンガ化時の筒井とのやり取りなどは、この本ならでは)。 圧巻は終盤の赤塚との訣別の件。 マンガへの愛と才能があって、周囲の人たちとの出会いがあって、空前絶後のヒットを飛ばし続けた赤塚が、何十年振りかに一人で切ったネーム。 その出来にがっかりする所ではこちらまでその落胆が伝わってきました。 赤塚、手塚、寺田ヒロオの三人に万感の思いを込めながら、プロとしてそして愛するマンガへの姿勢を新たにする長谷氏の決意。 「小説」と銘打った理由が読後は腑に落ちました。2008/06/02