内容説明
「聴くこと」を通じて、自分という存在がまわりの環境のなかに浸透していくような体験。それは、自ら聴いていると同時に、環境も自らを聴いているような相互作用的な意識の交感をもたらす。このような「聴くこと」の意識のなかでジョン・ケージをあらたに捉えてみると、それまでのラディカルな姿が消えて、ネイチャーに目覚めた「もうひとりのケージ」がみえてきた。本書では、ケージとともに、自らの耳を信じ、自らの身体と自らが根ざす場所にこだわった十三人のアメリカの実験作曲家たちの実践について語った。
目次
1 もうひとりのケージ―理論編(響きの喪失・響きの再生―音律再考;もうひとりのケージ―ジョン・ケージと実験音楽 ほか)
2 アメリカ実験作曲家の肖像(モノトナスな声―ロバート・アシュリー;パーチの声―ハリー・パーチ ほか)
3 音のパフォーマティヴィティ―実践編(『植物文様』―藤枝守(1)
『夜の歌』―藤枝守(2) ほか)
4 音のベースメント―CD解説(ジャストな響き;微分音の世界 ほか)