内容説明
とおいむかし、厳しい冬の飢えと寒さにたまりかねたクマたちは、すみかの暗い洞穴から出て、山をおりることにした。行く手に待ち受けるのは、残忍な大公に、ばけ猫、人食い鬼。ゆうれいもいれば、魔法使いもいる。さてはてクマたちの運命やいかに。おもしろく、やがて悲しい、クマ王国の物語。小学校中級以上。
著者等紹介
ブッツァーティ,ディーノ[ブッツァーティ,ディーノ][Buzzati,Dino]
1906年、北イタリア、ベッルーノの図書館や礼拝堂を備えた荘園に生まれた。父親の仕事の関係で一家がミラノに移住した後も、幼年時代のブッツァーティはほとんどをこの本邸で過ごした。ミラノ大学卒業後、「コッリエーレ・デッラ・セーラ」新聞の記者として活躍。『山男バルナボ』で作家デビュー、『タタール人の砂漠』でイタリアのカフカと賞賛された。1972年没
天沢退二郎[アマザワタイジロウ]
1936年東京生まれ。東京大学仏文科卒。詩人、評論家、宮沢賢治研究家、作家
増山暁子[マスヤマキョウコ]
イタリアの民話、伝説、中世文学研究家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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新地学@児童書病発動中
119
イタリアを代表するディーノ・ブッツァーティの童話。シュールでユーモラスなブッツァーティの挿絵からして素晴らしく、それを眺めるだけでもこの本を読む価値はある。厳しい自然の中に暮らしていたクマたちは、山から降りて堕落した人間たちの住むシチリアを征服する。クマたちは街で幸せに暮らし始めたのだが……。次から次へ奇想天外な出来事が起こって、ページをめくる手が止まらなくなる。特に幽霊の城のエピソードは印象に残った。結末には何とも言えない物悲しさがある。クマたちの無垢な心はなぜ失われたのだろうか。2017/10/16
seacalf
68
『タタール人の砂漠』で有名なブッツァーティのキュートなキュートな寓話作品。作中の詩が口ずさまれるほどイタリアの子供達の間では愛読書らしい。とにかく挿し絵のクマ達が可愛いくてたまらないので、ほくほくしながら話に夢中になれる。素朴のかたまりのようなロレンツィオ王が大変良い。紹介文にあるように前半はおもしろ可笑しく、やがて悲しいストーリー。戦争も化け物との対決、幽霊との出会いもあるけれど、ユーモアな語り口なので、ちっともこわくない。『古森のひみつ』しか読んだことがなかったけれど、ブッツァーティ、かなりいいかも。2020/08/17
カフカ
63
飢えと寒さに耐えかねたクマたちが、山を降り人間と戦い、その後町で暮らし始める。そこは人間だけでなく、ばけ猫、人食い鬼、幽霊、魔法使いなどもいる不思議な町。ブッツァーティによる可愛らしい挿絵と軽妙な語り口とは裏腹にシリアスな場面も。教訓めいた童話ではありますが、酸いも甘いも経験してきた大人にこそ、心に刺さる物語かもしれません。2022/09/05
らぱん
61
古典劇のような体裁で魔法使いや幽霊や怪物などが登場し児童文学らしさがあるが、一筋縄ではいかない。一見、可愛らしい絵柄で見誤りそうになるが、熾烈な戦闘や卑劣な暗殺が描かれる。 大まかに前半と後半の二つの物語があり、善(クマ≒自然)と悪(人間≒文明)の戦いで善の側が勝利するが、善が堕落し悪に染まった末に犠牲により改心し文明を捨て自然へ回帰する。 大筋が単純ではない上に細部に捻りがあり複雑な物語になっている。 勧善懲悪ではなくハッピーエンドでもない。皮肉で厭世的でさえあるが癖になる。結構好きになってきた。↓2020/01/11
nuit@積読消化中
59
ブッツァーティの描く挿画がたまらなく愛らしい。しかしお話は思いの外シリアスな展開。アニメーション映画化もされたようなので、そちらもいずれ観てみたい。2022/01/30