出版社内容情報
丹波篠山を舞台に、豊かな自然の中でくりひろげられた少年と動物たちとの交流を、生き生きと描き出した珠玉の短編集。(N-1)
<読んであげるなら>---
<自分で読むなら>小学高学年から
内容説明
冬枯れの田んぼから、あらんかぎりの力で飛び立とうとするタヒバリを、ひたすらねらい、追いつづける「ぼく」。小動物たちの息づかいが、人間の生活のすぐかたわらで感じられたふるさと丹波篠山を舞台に、少年と動物の交流を生き生きとえがいています。「モル氏」「蛇わたり」「タヒバリ」など十編。小学校上級以上。
目次
モル氏
裏薮の生き物たち
森と墓場の虫
水底の岩穴にひそむもの
蛇わたり
イタチ―落葉の精
クマネズミ
おばけ鮒と赤い灯
タヒバリ
魔魅動物園の死
著者等紹介
河合雅雄[カワイマサオ]
1924年、兵庫県篠山に生まれる。日本モンキーセンター、京都大学霊長類研究所教授を経て、現在、兵庫県立人と自然の博物館館長、京都大学名誉教授。著書に、『人間の由来』(毎日出版文化賞)、『小さな博物誌』(産経児童出版文化賞)などがある
平山英三[ヒラヤマエイゾウ]
1933年、愛知県岡崎市に生まれる。東京芸術大学美術学部卒業。平山和子の描く落ち葉の絵を一年に一日だけ展示する「落ち葉美術館」を主宰
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナーキー靴下
83
少年時代の自然との触れ合い、ありのままを描いた短編集。額縁の中の触れられない存在ではなく、掴み取れる動植物たち。私自身の子供時代を思い出し、甘く懐かしく、悔恨も湧き上がってくる。自然への憧憬や感受性が、子供時代の体験によって醸成されるであろうことはもちろんだが、単純に自然が豊かな田舎であれば良いわけではないとも思う。夕暮れ時のコウモリの群れ、刈り揃えられた芝生からひょっこり伸びたネジバナ、見過ごしていた私に教えてくれたのは都会育ちの夫だった。立ち入り禁止表示は多いが、都会にも自然はたくさんあるのだ。2022/05/25
ぱせり
6
生きもの三昧の少年時代、というと、わたしは、明るさや喜び、憧れなど、何か甘美なものを思い浮かべるが、ここに書かれている少年時代は、生臭く、禍々しいといえるほどの暗さと背中合わせだ。病弱で学校を休みがちだった少年にとっての自然は、人との交わり以上に(苦さも含めて)濃厚なリアルだった。 2022/03/26
kana
5
モルモットの話が印象に残った。自分の意思で飼い始めた動物を世話しきれずに手放したり、あまり良くない環境で放置してしまったり…。大人になった今ではとても残酷だなと思う。その残酷さに気付いた時、責任感が生まれ、子供から大人になっていくんだろうな。2016/02/05
おかっち
4
この本は凄く大切な出逢いになった。 私はこのような自然の中で動植物と遊んだことのない身。かろうじて、泥遊び、山登りなどを経験し、現代の子よりかは、ゲームもない時代に育った。 それでもこの物語を読むと、危険と隣り合わせで、生命を味わいながら遊んでみたいと心から叫びたくなりました。動画や漫画より何より面白い一冊だった。 声を出して笑い、また、アドレナリンが出るような恐怖心が生々しく伝わる。 自然を壊す事は自分自身を破壊する事 人間だけは別物だ。人間だけが思いのまま自然を利用できるはずない。 2023/08/05
おにぎりまる
4
映画「森の学校」を観て、なんて素晴らしいの…と思ったので、原作のこちらも読んでみた。もう、日本人全員これ読んでほしい。私たちがどこかに置いてきちゃった経験や感情がいっぱい詰まってる。こんな子供時代を皆がおくっていたら、いったいどんな世の中になっただろう。もうすでに失われてしまったものもたくさんあるけれど、それでも少しでもこの先も残していけたら。2022/05/18