内容説明
北日本を中心に、豊かな生態系と美しい景観を保ってきたブナの森。このブナの森は、かつて広く伐採され、質的にも大きく変わってしまった。しかし近年、その豊かさの再評価が進み、生物多様性保全の重要性が社会的に認知されるようになり、ブナの森の伐採に歯止めがかかったばかりでなく、再生への取り組みが各地で始まっている。こうした取り組みでは、その土地独自の生物多様性への配慮が不可欠になる。科学に裏打ちされた、健全で効率的なブナ林復元に必要な技術、考え方を紹介。
目次
第1部 ブナの種子生産の生態学(ブナにおけるマスティングとその適応的意義―受粉効率仮説と捕食者飽食仮説の検証;ブナにおけるマスティングのメカニズム―開花量の変動と同調のメカニズムの検証;ブナの種子食性昆虫―加害種の生活史と共存機構;ブナの受粉の分子生態学―自家不和合性と近交弱勢)
第2部 ブナの結実予測技術の開発と発展(ブナの豊凶にかかわる要因の探索―マスティング研究と結実予測につながる研究プロローグ;ブナの結実予測技術―その開発と利用;豊凶予測の発展型―どこでもできる予測手法;フェノロジカル・ギャップの発見―開葉のタイミングと稚樹の分布)
第3部 ブナの遺伝的変異とその保全(ブナの分布の地史的変遷―動的にみた北限;ブナの集団の遺伝的変異と遺伝的構造―地史的分布変遷の影響;ブナの環境応答特性の地域変異―光合成機能と葉の形態・構造;ブナの種子貯蔵方法の開発―地元産種苗の安定供給のために)
第4部 ブナの天然林施業と研究(北海道南部におけるブナ林施業の過去・現在・未来;ブナ林の天然更新に関する施業と研究)