感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふみすむ
11
「白雪姫やシンデレラよりは月に帰るかぐや姫に心を打たれた。可哀想だと思ったのではなく、羨ましかったのだ」悲壮美あふれる結末。一人称の「僕」を用いることで、女という自分の性別を曖昧にして、ジェンダーの鬱陶しさから逃れていた主人公。性を超えた清澄で純粋な一人称を欲して、高潔な自我を気取ったり、理想化した同性に恋をしたりするうちに、不安定な17歳の期間は終わる。ついに防波堤である「僕」が決壊して、「わたし」になってしまった瞬間の途方もない喪失感が読後を支配した。2014/10/06
ちゃこ
5
“女子高では誰も女性である必要がない。皆、ただ一種類の人間でありさえすればよかった。”本当はどこであったってそれでいいはずなんだけど。2013/06/07
龍國竣/リュウゴク
3
表題作は、女になりきれずに自分のことを「僕」と呼ぶ女子高生が主人公である。もう一篇の「人魚の保険」では、日本に馴染めない外国人が主人公として書かれる。この馴染めない人々が、最後まで馴染めず漂うままで終るのが後者で、一応の解決をみたのが前者なのだろう。2014/02/28
ハシヒロ
3
90年代に純文学が背負っていたテーマを、今はライトノベルが受け持っている気がした。2010/04/25
こめんぶくぶく
2
雨の月曜の朝の全校集会を思い出した。およそ1300人もの女子高校生が一堂に集う体育館は、黒髪の黒い目の黒い制服の大きなうねりに満たされていた。濡れて膨張したジャンパースカートの重みで地球の引力を肌で感じ、その繊維が放つ湿った匂いで鼻腔がぼんやりしてくる。その瞬間は一切の個性を消す。そんな中で今大声を突然はりあげたらどんなことが起こるのだろうと時おり想像しながら。あ、感想になってないね。2015/09/21