福武文庫<br> カニバリズム論

福武文庫
カニバリズム論

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  • サイズ 文庫判/ページ数 288p/高さ 16X11cm
  • 商品コード 9784828830551
  • NDC分類 904

内容説明

「食べなければ死、食べれば悪という絶体絶命の深淵に置かれた人肉は、なんと精神的な存在物であることか。(本文より)」カニバリズムをめぐり古今東西を飛翔し、迷宮としての人間の生に迫る痛快無比の文学的エッセイ集。

目次

カニバリズム論―その文学的系譜
迷宮としての人間―革命・悪・エロス
食の逆説―開高健氏『最後の晩餐』をめぐって
中国人における血の観念
魔術における中国―仏陀とユートピア
中国残酷物語―マゾヒズムの文化史
虚構と遊戯―中国人の性格について
王国維とその死について―一つの三島由紀夫論のために
恐怖の本質―アンドレーエフ「血笑記」と魯迅「狂人日記」

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

15
実際に食人について書かれているのは50ページ程度。そこから始まり中国人のオカルティズム、マゾヒズム、国民性、王国維の自殺(三島由紀夫との類推)、魯迅の阿Qや狂人日記についてを纏めたエッセイ集。全体を通すと中国人の思考構造の説明となっていて、昨今ネットの普及で彼らの奇行がよく話題になっているが、彼らなりの論理で動いている事が判る。狂人というのは論理的なんだよ、という言葉が頭をよぎる。相変わらず古今東西の文献を引用したくっているので、気を抜くと積読本の概要を読んでいたりする。ミステリーのネタバレは止めて下さい2013/12/06

奏市

8
行きつけの古本屋で目に留まり買ってみたが不思議なこういう事を思索している人がいるんだと感じた内容だった。専門は中国文学の著者がメデューズ号事件やアンデスの聖餐などの実際の出来事や中国・ロシアを中心に文学上での挿話を交えて人喰いについて綴った内容を主とするエッセイ集。武田泰淳『ひかりごけ』の理解が少し深まったかと思う。解説の荒俣宏さんは「判りやすい」から有難いと書いているが、知識に乏しい自分などには難しい箇所ばかり。魯迅とかゴーゴリとか読んでる人は全然違った楽しみ方ができるんだろなとやや残念な読書に。2023/07/17

三柴ゆよし

7
好きこのんで人肉を食いたいとは思わない。けれどもし、食わねば死ぬ、という状況にあったとしたら、まず間違いなく食うだろう。そんな気がする。とはいえ、人は飢餓によってのみ人を食うわけではない。食人という行為は、きわめて多義的だ。エロティシズム、呪術、純粋な好奇心あるいは美食の求道。本書において中野氏は、古今東西の文献を紐解きながら、人はなぜ人を食うのか? という命題と膝突き合わせている。大変面白いエッセイだ。ちなみに序文は澁澤龍彦。2009/11/01

冬佳彰

6
学生の頃に読んだ本。発作的に思い出した。今、手元にないが、東西のカニバリズムや纏足、宦官、アナグラムなどに関して書かれていた。間違ってならないのは、こうした事象を、ある民族や文化を貶めるために使わないことだろう。中野さんの「掘り方」はもっと深く、人間というものの深淵やエロティシズムの原理のようなものに達していたと思う。手法は、恐ろしく博学で勘の良い探偵のようで。今にして思えば、白川静さんの研究を連想させたりもする。現在、この流れを継いでいる学者っているんだろうか?

うえ

5
「中国の死刑には…華々しい物語は一切ない。宋代の桂万栄が編纂した『棠陰比事』は、古来のすぐれた判例を集めたもので、わが西鶴の『本朝棠陰比事』をはじめとする江戸期裁判物に大きな影響を与えたが、リラダンの「断頭台の秘密」に匹敵する話は何もない。いや、『棠陰比事』はともかくとしても…中国人は、死の事実のみ記録すればよいのであって、死の瞬間の前後をくだくだしく描写したりはしない…異常な死であっても、たとえば追いつめられた項羽は「乃自剔而死(すなわちみずからくびはねてしす)」(史記)と、たった五文字で片づけられる」2020/06/03

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