出版社内容情報
世界には91種のクジラが存在し、内41種を日本で見ることができます。本書では函館を拠点にストランディング調査(打ち上げられたクジラの調査)を行い、専門の調査機関を設立した著者の歩みを、数々の事件や研究の苦労、発見の喜び、恩師や協力者、後輩とのかかわりを通して紹介します。
内容説明
調べたクジラの胃、300以上!調査での移動、地球2周分!クジラに呼ばれて北へ、南へ!
目次
1 イルカやクジラを研究するということ
2 鯨類研究者への道
3 「イカ」の研究者に弟子入り
4 イルカの種類によって餌が違う?
5 まだまだ続くよ研究は
6 ストランディングの研究機関をつくる
著者等紹介
松田純佳[マツダアヤカ]
1988年京都府生まれ。2017年9月に北海道大学大学院博士課程を修了。博士(水産科学)。第8回日本学術振興会育志賞を受賞。東京大学での特任研究員を経て、2018年からは北海道大学においてストランディングした鯨類の研究を続ける。所属していた研究室の松石教授とともに、ストランディングネットワーク北海道をNPO法人化。現在はその副理事長を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kinkin
108
クジラ類の食生活を研究する著者がなぜ始めるきっかけになったのか。博士論文を提出し博士になりその後どう生きていくかが書かれている。浜に漂着したクジラの情報を得ると日本の西東を駆け巡り、その強烈な腐敗臭にまみれて胃袋の中を調べる学問はとても大変だ。クジラは腐敗の進むのがとても早いらしく内臓がガスで爆発すという。実際に海外では町中が内蔵と血まみれになったエピソードもあった。クジラとイルカの違いが書かれている。体長が小さいとイルカある程度を超えるとクジラということだ・研究者の日常が失敗談交えて書かれていた。2022/06/01
☆よいこ
89
北海道大学でクジラの食性について研究している著者が、その研究活動について語る。漂着したクジラの死体を解剖し、その胃の内容物を探る。ストランディング(stranding)とは漂着・座礁・混獲・迷入をいい、打ち上げられたイルカやクジラを指す。北海道の各地にストランディングしたイルカやクジラの情報を集める。10m級のクジラはまるで怪獣のようで、腐敗した体内から噴き出すガスは大変なものだ。体当たりで研究に打ち込む著者の体験記がとても興味深い▽女性研究者ならではの悩みも多いが、それも含めてとても面白かった。2022/06/24
美紀ちゃん
78
小説ではなく、 哺乳類に関する研究をまとめた書籍。 解説がわかりやすい。面白い。 クジラ用の包丁の大きさがハンパない。 鯨愛が溢れている。微笑ましい。 胃の中身を一つ一つ確認していく作業は、本当に大変そう。 女性の研究者は少ないそうで、大変なのが伝わってくる。 自分の好きなことを仕事にしたいと思っている中学生に希望がみえるような楽しさ。 輝いている人は、魅力的。たくさんの人に読んでほしい本。2022/03/07
annzuhime
46
島外の図書館から取り寄せ。クジラへの愛が溢れる1冊。鯨類の食生活の研究をしている著者。打ち上げられたクジラたちからたくさんの情報を得るために駆け回る。愛と根気と熱意がなければ出来ないよね。鯨類のことも研究内容のことも、とても分かりやすい説明なので読みやすかった。小学生の頃、当時住んでいた島の砂浜に、イカを追って大量のイルカが迷い込んだ。漁師さんたちが必死で沖に誘導しようとしたけど、ほとんどのイルカが砂浜に上がって死んでしまった。この本を読んでその当時のことを思い切なくなりました。2022/04/14
booklight
42
『キリン解剖記』に続く若手研究者の研究紹介本第二弾。イルカ・クジラの胃の内容物から、何を食べているかの研究。若手なので日常から研究へのつながりが自然で読みやすい。北海道にはイルカ類がよく漂着するらしい。ストランディングネットワークというものがあり、通報があると回収に向かう。この辺は『キリン解剖記』と同じ。しかも北海道なので、稚内から函館まで、各地に休日なしに出かける。大きすぎるとその場で解剖してお腹の中に入ることも。好きなことをしている楽しさの共感と知らないことを知るという楽しさから頁をめくってしまう。2023/04/15