内容説明
自動車工場や外食チェーン店から米国の保険会社まで、終身雇用崩壊が叫ばれる以前から非正規労働は幅広く存在してきた。合理性があるから存続する、ならばその根拠は何なのか。職場まで下りた貴重な調査資料をもとに実像を描き、改善策を提案。
目次
序章 非正規労働を考えるために―他国も専門職もみる
第1章 社外工と臨時工―一九五〇年代初めの造船業
第2章 アメリカの非正規、正規労働者
第3章 製造業の生産職場
第4章 三次産業の非正規労働者
第5章 設計技術者
終章 ひとつの提案―人材選別機能の重視
著者等紹介
小池和男[コイケカズオ]
1932年生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。東京大学助手、名古屋大学教授、京都大学経済研究所所長、法政大学教授、スタンフォード大学ビジネススクール客員教授などを歴任。現在、法政大学名誉教授、名古屋大学特別教授。主な著書『職場の労働組合と参加』(エコノミスト賞、東洋経済新報社、1977年)『高品質日本の起源』(日経・経済図書文化賞、日本経済新聞出版社、2012年)他(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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出世八五郎
14
名古屋大学出版会より出版。故に3200円と高い。研究者向けの本のように思われる。内容は言い回しがくどいので、理解するのに根気がいる。著者によれば、現代と同じく昔も非正規というものはたくさん存在した。彼らは技能を認められ正社員にもなった。現代だとこの現象は少ないのが問題だが、非正規の洋の東西を比較して、巻末で解決策を提案する。___メモ:先任権、人材選別機能、雇用調節機能。2017/05/21
koji
9
敬愛する小池和男先生の著作。主題は正に旬の「非正規労働」。動機は当然「当今の非正規労働の議論への懸念」。著者は、1)非正規労働には3つの機能(①人材選別、②雇用調節、③低技能職務担当)があるが、日本は②、③に偏り過ぎており、その弊害が現在の議論を貧困なものにしていること、2)その上で提言として、非正規労働を2分類し、中低層には仕事表により昇格制を整備すること、中上位層には労働組合を活用しその処遇、働き方を共に考えていくこと。私はもっとこの労働経済学の泰斗の提言に耳を傾けるべきと思います。もっとご活躍下さい2016/10/22
Sym
1
非正規労働者がなぜ存在するのか。もし非正規が正規と同じ仕事をしているにもかかわらず低賃金で流動性の高い労働者であるとすれば、なぜ正規労働者は存在するのか、という問いから、正規と非正規の仕事内容を見ていく。そこには、人材選別機能がある…という視点がこれまで自分にはなくて面白かった。現代日本においてこれが当てはまるのか考えていきたい。2020/04/15
yes5&3
0
再読。ビジネス書でなく学術書。とりあげる調査を研究として評価するところから入る。昔から非正規は存在した。臨時工、社外工、養成工、米国の専門職で3年間のお試し期間というのも人材選別機能のひとつ。仕事の内容に関する調査というのは見当たらない、作業か判断を伴うか見極められないというとこがもどかしい。が、これは社会科学の論文であり重要な切り口を与え、この後の累積的展開も期待できる、と読むべき。日経新聞夕刊「目利きが選ぶ3冊」がきっかけだったが、切り抜きを読むと推薦者は中身を読んでいないのでは?と感じた。2020/10/14