著者等紹介
清水久男[シミズヒサオ]
昭和28(1953)年、東京生まれ。昭和53(1978)年、明治大学大学院修士課程史学専攻考古学専修修了。専門は埴輪研究。明治大学考古学陳列館勤務を経て、昭和54(1979)年から平成29(2017)年、大田区立郷土博物館学芸員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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南北
64
明治時代に入るとそれまで盛んだった浮世絵が急速に衰えてきたが、欧米向けには販売する余地があると考えた渡邊庄三郎という版元の下で「新版画」と呼ばれる版画の絵師となったのが、川瀬巴水である。明治・大正時代を中心とした風景画を描いているが、江戸時代の浮世絵よりも多色刷りにしているため、情緒のある、なつかしい風景が掲載されている。コレクターとしてはスティーブ・ジョブズが有名だが、イギリスの故ダイアナ妃の執務室にも巴水の絵が飾られていたことが知られている。年末年始などはこういう絵を見て過ごすのもいいと思う。2023/12/15
ホークス
55
「良いなあ」と思っていた画集をじっくり見た。画題はほぼ風景。静けさと怖さを強く感じた。静けさの半分は版画という形式のためで、半分はイメージに対する巴水の厳しい制御ゆえだろう。元の被写体とは別物になっている。怖さの原因は、日常に被さるこの別世界へと引き込まれるためだろう。あちら側の大気の匂いまで感じられそうで、とても幻想的。特に水のある風景が好きだ。『大森海岸』の暗い水辺で何かをする漁師と、傘を差して見つめる人。『清洲橋』の小舟で暖をとる人と、暮れ方の雄大なグラデーション。年代による作風の変化も興味深い。2022/08/13
石油監査人
18
川瀬巴水は、大正から昭和期の浮世絵師、版画家。生涯、日本全国を旅して、旅情溢れる風景画を数多く残しています。また、巴水は海外向けの土産用として新版画を多数、制作したことから、特に外国での評価が高く、スティーブ・ジョブスが10代の頃から収集して、晩年も自分の部屋に巴水の夕景の絵を飾っていたことが知られています。穏やかな印象を与える作品が多い中で、厳しい雪景色を描いた作品が心に強く残ります。特に版画でリアルな吹雪を表現する巴水の技量の高さと芸術性は驚きです。絶筆となった平泉金色堂も深い雪景色でした。2023/10/15
にゃうぴょん
11
どこか懐かしい気持ちがこみあげてくるような心揺さぶられる作品です。版画とは思えない繊細さや色彩のグラデーションが美しいです。夕暮れ時の蒼い空に心奪われました。2021/11/10
ぶ~の
10
ページをめくるたび、あまりの美しさにため息がでました。表紙に惹かれて手に取りましたが、どの作品も繊細で色鮮やかでこれが版画だなんて驚きしかありません。川瀬巴水氏の絵が素晴らしいのはいわずもがな、彫師さんも刷師さんも本当にすごい。作品のほかに木版画の摺りの工程を順番に再現したセットというのが紹介されていて、パーツ毎に彩色されて、少しずつ色が重なってどんどん深みが出てくる様子がとても興味深かったです。現物を見てみたいなあ。2023/04/01