蝶の生態と観察

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ A5判/ページ数 236p/高さ 23X16cm
  • 商品コード 9784806723264
  • NDC分類 486.8

出版社内容情報

既知の情報を整理し、体形づけ、どこまでわかっているかを明示した、これからの日本の蝶学に欠かせない蝶研究者必携の書。
近年になって、大学・研究所でも蝶を主題とした研究がさかんに行われるようになり、分類学はもとより、生態学・行動学・生理学・遺伝学などの分野で、数々の成果が発表されている。しかし、一方において、地域的な分布調査や移動(渡り)の調査、食性、行動などの調査・研究のように、昆虫学を職業としない広義のアマチュアに残された分野は広く、しかもその奥は深い。
本書は、時間や設備、文献など研究条件に恵まれない、一般のアマチュアや学生の蝶の生態研究、観察の指針となるようにまとめられた絶好のガイドブックである。

【内容紹介】本書「あとがき」より
 この本は蝶の生態を観察しようとする人たちへの提言であり、私たち自身への問題提起である。
 現在は蝶の採集、飼育、観察や同定についてのガイドブックは豊富に出版されているので、難易度にはこだわらずのびのび書いてみた。私たちの経験では、むしろ多少密度の濃い部分のあるほうが有益であるように思われるからでもある。また、本書は蝶の生態・観察についての百科事典でもなければ教科書でもない。思い切って項目を整理し、そこから一般的な問題へも発展させるように努力してみた。
 この本はまた、時間や設備、文献など研究条件に恵まれない一般のアマチュアや学生の蝶の生態研究、観察の指針となることを目指したものでもある。もちろん、蝶の生態を調べるということは、それが趣味であれ職業であれ、自然科学の進歩と無縁ではありえない。したがって、その方法としては周到な計画にもとづく実験・観察や統計処理などによる手法がきわめて有効である。
 しかし、少なくとも今日までアマチュアによって進められてきた日本の蝶学の中には、実験も統計処理も不可能な、あるいは不要な分野も多く存在するように思われる。それはさまざまな角度から蝶を観察し、そこから推論、仮説を引き出して組み立てる作業である。場合によっては、これは仮説とはいえず、その前段階の想像の世界に属することもあるだろう。見方によっては、それは科学的根拠のない空理空論、砂上の楼閣にすぎないのかもしれない。しかし、こういった“想像仮説”は、自然や蝶の世界に対する興味や探究心をふるい立たせる偉大な原動力となることだろう。そのなかにはいずれ真理として認められるものもあるにちがいない。また一方では、それがいつの間にか誤った定説となって、あたかもそれは解決ずみの問題であるかのような印象を与えるという弊害を生じるおそれもある。これまで真理、または定説とよばれたことには、つねに疑問をもつことが新しい発見につながるであろう。
 こういったプラス、マイナスもさることながら、思考と観察を織りまぜて蝶の世界を探ることは、何よりもまず楽しいことである。これからもさまざまな方法で蝶の生態は観察され、多くの知見が集積されていくにちがいない。蝶と楽しくつきあう道を、本書でも模索を試みたが、私たちにはまだよく見えてこないところもある。自然のなかで、あらためて蝶に問いかけを続けていく若い人たちに、大いなる期待をかけるゆえんである。本書がその一助となればうれしい。

【主要目次】
▲▲第1章・成虫の行動様式
  成虫の行動/成虫の日周活動
▲▲第2章・成虫の摂食行動
  食物をとるということ/訪花習性/樹液/植物の新芽からの分泌物/イネ科植物の穂の分泌物/熟果・腐果/腐敗した植物体(果実を除く)/アブラムシ、キジラミなどの分泌物/動物の死体・排出物/吸水/特殊な物質による誘因
▲▲第3章・種族保存のしくみ
  雄と雌/異種間の交尾/蝶道/なわばり/配偶行動/産卵行動
▲▲第4章・幼生期の生活
  卵/幼虫/蛹
▲▲第5章・幼虫の食物と摂食行動
  食物の種類/食性進化の道すじ/食性転換のしくみ/食草調査の課題/シジミチョウ科幼虫の特異な食性/摂食行動
▲▲第6章・防衛戦略
  成虫の防衛戦略/幼生期の防衛戦略
▲▲第7章・個体数をきめるもの
  1個体の産卵数/日ごとの産卵数/死亡率/季節的変動/年次変動
▲▲第8章・生息場所と分布
  蝶のすむ環境/垂直分布/分布の変動/日本列島と蝶の分布
▲▲第9章・生活史と環境
  出現期と発生回数/越冬・越夏と休眠/生活史における季節型
▲▲第10章・蝶の移動
  移動問題の歴史/生活環境と移動/日本列島をめぐる移動の問題/移動に関する要因/移動個体と非移動個体/国外から飛来する蝶
▲▲付・採集、飼育と記録の技術
  卵・幼虫・蛹の見つけ方/採卵と飼育/記録のとり方

内容説明

日本の蝶の生態はどこまで判明しているのか?一歩進んだ調査・研究ができる。蝶のフィールド・ワーカー、ナチュラリストのためのエコロジカル・ガイドブック。

目次

1 成虫の行動様式
2 成虫の摂食行動
3 種族保存のしくみ
4 幼生期の生活
5 幼虫の食物と摂食行動
6 防衛戦略
7 個体数をきめるもの
8 生息場所と分布
9 生活史と環境
10 蝶の移動―アサギマダラを中心に
付 採集・飼育と記録の技術

最近チェックした商品