内容説明
下級武士の日記から読み解く、江戸時代中期の村の暮らし。度重なる洪水に、武士たちはどのように対処したのか。田畑を荒らす猪の対策に、農民は銃を持てるのか。武士と百姓は一つの村の中でどのような関係にあったのか。仙台藩御鳥見役(鷹狩の世話役)として農村で暮らした下級武士が40年以上にわたって記した貴重な記録を解説する。
目次
小鳥・落鳥といえども捕るべからず
屋形様の狩
権現森、山追
武家諸法度(幕府法令)
飯米麦の通行許可証
預御林、巡見衆宿泊所用材を伐採
未検地の知行への課税
江戸上屋敷類焼「難儀たるべし」
杉苗一〇〇〇本植林
鳥の捕獲を禁ずる〔ほか〕
著者等紹介
支倉清[ハセクラキヨシ]
宮城県石巻市(旧河南町前谷地)の支倉家に生まれる。元東京都公立小学校長。宮城県前谷地の支倉家と、伊達政宗が派遣した慶長遣欧使節の大使・支倉常長とどのようにつながるのか、長年研究を続けている
支倉紀代美[ハセクラキヨミ]
宮城県東松島市に生まれ、石巻市前谷地で小学校・中学校・高等学校時代を過ごす。元神奈川県公立小学校教諭(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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楽駿
29
品川図書館本。下級武士とあるが、浪人でもなく、きちんと宮仕えしている宮城の山間部の当時の状態がわかる。何回も繰り返されるのが、猪対策。殿様のお狩場であると、一般人は狩りができないので、鉄砲を使用できない。けれどその実害があまりにひどく、空砲の期限付き使用許可になり、やがては、武士のみ期限付き使用許可。更に農民までが期限付き使用許可される。これだけ考えても、実害の大きさも然り、武士の力の低迷も想像できる。江戸時代後半の流れが、推察される1冊。興味深い1冊だった。2020/02/01
ワッピー
24
仙台藩士矢島喜太夫の40年分(吉宗・家重時代)の記録。現代語訳で読みやすい。拝領した知行地(現在の石巻市須江字瓦山)での農業経営のほか、藩林の管理、藩主の狩りに同行する御鳥見横目を務め、記載されている内容は、材木の出納、農地を荒らす猪を追い払うための鉄砲の使用許可(最初のうちは空砲、のちに実包)、藩主吉村の狩りのルートや成果を中心に米相場、河川の決壊、うわさや幕府触書、一揆の有様など広範にわたる。狩りに来た藩主吉村が喜太夫をつかまえて「いつも外してばかりではないぞ」と軽口をたたく人間臭さが妙にうれしい。2020/03/08
かーんたや
2
拙者かねてより困窮する者にて自力では修繕できませぬ2020/01/25
崎
1
うん年振りに歴史研究的な本を読んだ。当時の生活が分かりやすくて良い!噂話好きだな〜とか、猪めちゃくちゃ出てたんだなとか、鳥があんなに厳しく管理されてるんだなとか、診断書添付して上司に渡すのは何百年経っても変わらないんだなとか…。違うのも読んでみたいな。2020/08/03
コーリー
1
仙台藩士矢嶋喜太夫が享保元年(1716)から宝暦7年(1757)まで42年間書き溜めた『ニ樅亭見聞録』という古文書を丁寧に解読し、現代語訳をして、解説を付し、本にまとめている。単にくずし字を解読するだけでなく、現代語訳をして文意をつかむという基本的だが大切な作業を怠らないことが重要だと、この本を読んでいて再認識した。2020/02/07