内容説明
民間伝承あるいはオカルティズムを解明の秘法とするマッケン文学を方向づけた初期作品群を網羅。白日夢のごとき現実溶解の戦慄が心霊の跳梁する宇宙的凄凉感を孕む。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
26
再読、何度読んでも色褪せることのない傑作群だと再確認させられた。白眉は何といっても「パンの大神」、この世の外の恐怖を描いたその様はラヴクラフトと共通するものの、それが散文的に感じられる程の出来。全てが暗示に止められているのも恐ろしい。「白魔」はこの間新訳で読んだけど、改めて読むと新しい発見がある。描写された自然の美しさが逆にその奥にあるモノを浮かび上がらせてくるし、少女がその中に取り込まれていく様がなんとも言えない。「生活の欠片」は何となく身に詰まらされる。怪奇小説に興味のある人は読んでおくべきだと思う。2012/09/05
夜間飛行
3
「白魔」と「生活の欠片」が良かった。「白魔」は少女が森や野原を歩きながら見る光景と、幼い日に乳母から聞かされた物語によって織りなされる幻想の世界。石の歌声や、小さな白い人の幻視は、乳母の話の悪魔性が少女の中に生きていることを教えてくれる。「生活の欠片」は夫婦の淡々とした日常をベースにしていて漱石の「門」を思い出したが、ここでも根底には太古的な感情が流れている。マッケンは、話の中に別の話が組み込まれたり、細部にこだわるので読みづらい。しかし、秘められた「悪」と「無垢」とが放つ光によって心の奥底に訴えてくる。2013/02/04