内容説明
漱石の愛への慾求とその挫折とを丹念に描く。漱石にとって自己は掛替えの無いものであり、自己本位を貫いて生きるのでなければ、生きている事はおよそ無意味であった。けれども、自己本位に徹しようとして漱石は他者に愛される事を希求せずにいられなくなる。その二つの慾求がもたらす葛藤は我が近代文学史上類例の無いものだが、それこそが漱石の偉大であり悲惨なのである。「虞美人草」から「思ひ出す事など」まで、漱石の愛への慾求とその挫折とを丹念に描く待望の中巻、漸うここに上梓。
目次
第7章 虞美人草
第8章 坑夫及び夢十夜
第9章 三四郎
第10章 それから
第11章 門
第12章 思ひ出す事など