内容説明
自然主義的リアリズムに抗い、様々なメディアを媒介に感覚の錯乱を創造の武器として世界を幻視した四人の表現者に1920年代モダニズム文学の真髄を探る。
目次
水際の身体
「夜汽車」からの眺め―朔太郎の身体空間
“視”の錬金術―『猫町』序説
「廻転」のイコノグラフィー―『氷島』試論
萩原朔太郎の立体写真
めまいとエロティシズム―谷崎と朔太郎
“耳”の物語―『細雪』論
賢治と黒板―“「消す」行為”のアルケオロジー
賢治におけるインプロヴィゼーション、あるいは吃音的身体
ビオメハニカと賢治演劇〔ほか〕
著者等紹介
高橋世織[タカハシセオリ]
早稲田大学教授。早稲田大学政治経済学部政治学科卒(政治思想史)、大学院博士課程修了(日本近代文学)。北海道大学文学部助教授を経て、1993年より現職。学内では政経学部、大学院文学研究科(日本語日本文化専攻)、芸術学校などで多分野を横断する講義やゼミを開講。専門領域は、モダニズム研究、イメージ論、日本文化論
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感想・レビュー
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ハチアカデミー
14
テクスト論の愉悦ここにあり。切れ味の良さがずば抜けている。スパッ、スパッと作品を読み解いていく筆致は、爽快ですらある。時折小出しにする様々な分野の知識をもっと掘り下げて欲しいと思う箇所も多々あるのだが、それは読み手が自ら補足すれば良い。主に論じられる1910~20年代の作品群を、モダン表象として読み解く。朔太郎と写真、宮澤賢治と黒板など、モダンなモノからアフォードされた作品として小説を読み解くことは、同時代の社会や文化的環境の復元・考察にも繋がる。そこで提示されたヒントを、読者が再構築する楽しみもある。2014/11/08
Was
1
一言でいえば「スタイリッシュな研究書」。日本近代文学に現れる「触覚」の問題を、モダニズム文化やテクノロジー(機械と身体のアナロジーが頻繁に出てくるよ)を媒介にしてしなやかに読み解く。萩原朔太郎が読みたくなる。2012/10/25
nanchara_dawn
0
詩的修辞を真正面から論じるには、その論文も詩的になるしかない、ということなのだろうか……。日本の近代文学を、聴覚・触覚などの「感覚」に着目して読み解いていく。正直にいって自分には近代文学、なかでも詩を読むための資質がないし、だからこの本の価値も判定できないところがあるけれど、それらの文学を好んで読む人の「感覚」とはこのようなものなのか、と少しわかったような気がして嬉しかった。2012/11/16
あかふく
0
近代文学の「感覚」を問題にしていて、そこで問題になるのは「触」というものであるけれども、それはよく問題になる「視覚」の話と密接に関わっているという論じ方が面白い。ちゃんと朔太郎の写真について論じたものとしては早いのでは。あと文章がすごく上手いです・・・。2012/03/30