内容説明
2013年の夏、わずか12人が暮らす山口県の集落で、一夜にして5人の村人が殺害された。犯人の家に貼られた川柳は“戦慄の犯行予告”として世間を騒がせたが…それらはすべて“うわさ話”に過ぎなかった。気鋭のノンフィクションライターが、ネットとマスコミによって拡散された“うわさ話”を一歩ずつ、ひとつずつ地道に足でつぶし、閉ざされた村をゆく。“山口連続殺人放火事件”の真相解明に挑んだ新世代“調査ノンフィクション”に、震えが止まらない!
目次
発生
夜這い
郷
ワタル
その父、友一
疑惑は静かに潜む
コープの寄り合い
保見家
うわさ
ワタルの現在
くねくね
書籍化
古老の巻
ふたたび郷へ
ことの真相
山の神様
春祭り
判決
著者等紹介
高橋ユキ[タカハシユキ]
1974年生まれ、福岡県出身。2005年、女性の裁判傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成。翌年、同名のブログをまとめた書籍を発表。以降、傍聴ライターとして活動。裁判傍聴を中心に事件記事を執筆している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
519
最初に告白せねばならないが、勝手にこれを「津山事件」(全然「つけび」じゃない)のルポだと思っていた。蓋を開けてみたら、知らない事件…でもまぁ、舞台が限界集落であったこと、村八分が主な動機?だったこと、は共通しているのかな。こちらの犯人は素人のわたしが読んでもなんらかの精神障害を抱えていたようだし、津山の方は確か病弱だったような。内容にフォーカスすると、取材は大変よくされていると思う。ただ、最初はネット記事であったせいか、文章が読みにくいというか。「惜しい!」(謎に上から)というところ。2023/06/14
mitei
308
こういう濃密なコミュニティから出た惨劇って怖いけど、みんな噂大好きだよなと思う。最後の10年後に話すおじいさんはそんな事件に大した話じゃなかったのが肩透かし感。あとがきにもあったように構成が結構斬新だった。いきなり写真がなんとなくは分かるがなんの説明もなくあったり、著者の紹介を話中に多く盛り込んだり、いろんな証言を合わせて1人の人が語ったようにしたりと面白い。オチは別に噂だけが原因で5人は殺されてないというなんともな感じが印象的。2021/04/29
まこみや
158
最初は、犯人の来歴と人物像を中心に、村の歴史と噂を含めた村の実態を追究する定型の事件ノンフィクションかと興味本位で読み始めた。しかし読み終わってもっと大きなテーマを投げかけているように思った。一つは精神障害とみなされる被告に対する判決への問題提起である。もう一つは情報や噂と向き合う「我々」の難しさである。社会の中で生きている我々は、昔から今に至るまで、様々な噂や情報に取り囲まれて生きるしかない。それらを一概に嘘やフェイクとして退けることができない以上、加害者にも被害者にもならずに生きることの難しさである。2020/05/24
fwhd8325
155
事件が起きた時に、報道されていたように「八つ墓村」のようだと思いました。事件の記憶は薄れていましたが、このルポを読んでいて、薄気味悪さが離れませんでした。この時代にまさかの連続です。閉鎖的な社会と閉塞された村。これはフィクションではありません。本当に怖いです。人が一番残酷で怖い、そんな言葉を思い出します。2021/01/13
モルク
128
2013年夏山口県の限界集落の村で5人が殺された事件をノンフィクションライターが追う。田舎の村あるあるの噂話こそが情報という世界。殺人犯ワタルの支離滅裂な手紙、どこまでこの男のことを信じればいい?このワタルという男のことなどもう知りたくないという思いがつのる。父は盗人と子供の頃から陰で言われてきたジレンマが、まわりからの孤立と被害妄想をさらに膨らませる。最後の老人の話はどのようにとらえればいいのだろう。まさかそれが真相?そうだったらホラー。2020/12/01