内容説明
西洋思想の根底にある征服・把握・占有という収奪的態度を拒絶するハイデガーは、存在を開示する言葉そのものの語りに耳を傾ける。人間の知の条件を根源的に問い直す、言語思想・芸術論への誘い。
目次
第1章 理論的ということの限界
第2章 深層の歴史(ゲシヒテ)
第3章 「芸術作品の根源」
第4章 芸術の死?
第5章 言語、伝統、思索の力
第6章 ハイデガーと詩的な語り
第7章 ナチズム、詩作、政治的なるもの
著者等紹介
クラーク,ティモシー[クラーク,ティモシー][Clark,Timothy]
英国ダラム大学英文学科教授。専攻はロマン主義の詩学。Oxford Literary Reviewの編集委員
高田珠樹[タカダタマキ]
1954年生まれ。大阪外国語大学教授。専攻はドイツ思想史、哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tieckP(ティークP)
3
読みやすい語りで、訳も、訳者は本書への幾つかの不満は述べつつも、こなれていて、誠実な仕事という印象。訳者が言うとおり、この一冊では不足も多く、特に前期の「存在と時間」をあまり扱わないのは、物足りなさも感じさせる。しかし、その分、言語やヘルダーリン、そしてナチスへの関与といった項目については、他書よりも丁寧に扱われており、文系の学生を対象としたシリーズとしては上出来。読んだからといってハイデガーが自家薬籠中となるわけではないが、他の人が言及したときに、理解不能で取り残された気になることは、以後避けられる。2012/04/08
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2
ハイデガーの変わった切り口の入門的な良書です。あとはオタク視点のメモみたいなもの。VTuberを解体しようとした時に、ハイデガーは適切なのかなと思っている。 しかしハイデガー的にVTuberを解体するのは正しくもあり、間違いでもある。間違っていると思う解体の仕方も、VTuber自体の質を下げるわけではなく、むしろ価値を上げるもので、価値を上げるのは有限性。多分それは言語化してしまうと、推せる時に推せってやつです。でもニコ生主やアイドル、VTuberも、目の前から姿を消すまでは、その場にいますから。2023/05/04
ゆえじん
2
ハイデガー入門として読む.2章まではハッキリ分かったが以降ハイデガーの芸術論からは、もやっとする.「世界-大地」とかはまだいいのだが、ヘルダーリン読解に至っては、胡散臭い印象すら覚えた.ハイデガーの用語系を丹念に見ていく入門書が必要かもしれない.書き残しておくことがあるとすれば、1章、ヒューバート・ドレイファスがハイデガーの立場から人工知能批判をしたという紹介があること.ハイデガーの人間理解と技術文明批判がまさに交錯する地点で、どのような思考が可能なのか、ハイデガーの著作を読むにあたって考えていきたい.2018/10/07
アルゴス
2
最近まとめて読んでいるハイデガー論のうちではなかなか秀逸。哲学よりも文学の分野でのハイデガーの仕事の大きさを、学生向けにわかりやすく説明していて好感がもてる。とくに後期のハイデガーの思想がフランス思想にどれほど大きな影響を与えたかが、理解できるだろう。お勧めだが、少し深さに欠けるので★は三つ。 ★★★2017/11/11
fantamys
1
安易な理解を拒むハイデガーを出来る限り初学者向けにまとめた本。良書。2017/11/17