内容説明
西洋文化によって周縁に追いやられた人びと“サバルタン”の声を擁護し、文化理論を政治的な武器とするスピヴァク。『文化としての他者』『ポストコロニアル理性批判』などの難解と思われがちな重要書をどう読みほぐすのか。グローバル化にあらがう倫理的思考への招待。
目次
なぜスピヴァクか?
第1章 理論、政治、および文体の問題
第2章 脱構築に仕事をさせる
第3章 サバルタンから学ぶ
第4章 「第三世界」女性と西洋のフェミニズム思想
第5章 唯物論と価値
第6章 植民地主義、ポストコロニアリズム、および文学テクスト
スピヴァク以降
著者等紹介
モートン,スティーヴン[モートン,スティーヴン][Morton,Stephen]
1972年生まれ。フィンランドのタンペレ大学英語講師。ニューヨーク市、ウィトニー博物館のアメリカン・アート特別研究員を勤める。批評・文化理論、二十世紀文学と視覚文化に関する著作がある
本橋哲也[モトハシテツヤ]
1955年東京生まれ。英国ヨーク大学英文科博士課程修了。東京都立大学助教授。専門はイギリス文学、カルチュラル・スタディーズ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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白義
8
本邦唯一のスピヴァクの入門解説書。デリダの脱構築を反植民地主義に、フェミニズムに適用してそうした弱者を代弁する思想でもすくい取れない「サバルタン」と呼ばれる従属的な人々の歴史への想像力を研ぎ澄ませてきたスピヴァク。その難解さはマルクス主義や脱構築といった思想と、政治的現実の間で引き裂かれ、困難な問に向き合っているゆえであると整理してわかりやすく整理している。各章末に要約もあり、実際にスピヴァクの本を読むお供として好適の一冊。スピヴァクへの批判やその主題の継承者も追っていて、まんべんなく抜かりないという感じ2018/04/22
鬼束
0
スピヴァク入門書はこれしかない
Ecriture
0
第一世界の知識人が第三世界に対して一括りなポスフェミやポスコロで満足したせいで、逆にサバルタン達の語りを不可能にしてしまった罪を問う。難解で慎重なスピヴァクの文体はサイードとは異なるが、その迂回された抽象性の中にしか具体性は宿らない。文学の中にサバルタンの声を聞け。2008/10/25
灘子
0
絶対に本橋哲也を見つけるウーマン。スピヴァクの悪名高い文体や複雑さは小耳に挟んでいたので入門編から。 複雑というよりその論理は繊細で自らにすら脱構築の刃を向ける。「第一世界」のナショナリズムや人権、そしてフェミニズムが様々な方法でサバルタンの声を無いものとして扱ってきた。自分でも反省。他の人の境遇を自己語りの道具にしちゃならない。マルクス主義とデリダはそろそろ勉強してもいいかも。 こんな短くてなにがわかるかね。2020/12/14