内容説明
関東大震災で失われた浅草凌雲閣、通称「十二階」。眼下に吉原を望み、日本初のエレベーター、百美人、戦争絵を擁し、絵や写真となり、見世物小屋、広告塔としても機能したこの塔の眺めが、啄木や花袋らのまなざしをとらえ、「近代」の欲望を体現する。
目次
塔の眺め
十二階と風船
人のまなざし・美人へのまなざし
塔とパノラマ
舞姫と塔
まなざしを要するもの
覗かれる塔
眺められるだけの塔
パノラマのような眺め
塔というパノラマ
啄木の凌雲閣
十二階という存在
著者等紹介
細馬宏通[ホソマヒロミチ]
1960年生まれ。京都大学大学院理学研究科博士課程修了。現在、滋賀県立大学人間文化学部講師。専門はコミュニケーション論
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感想・レビュー
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猫丸
7
一望のもとに見渡す塔からの眼差しと、臨場感を本旨とするパノラマの視界を対比することによる視線論。さらに、見る見られる関係の逆転にまで話は及ぶが、このあたりの論旨はあまり切実感を感じられない。十二階とパノラマが文学へ与えた影響は興味深いものがある。とくに鷗外、啄木。都市風俗の中心にあった十二階は、明治末期の文化に確実にその影を落としている。近代技術の象徴の時期はすぐに終わり、吉原覗き、美人写真の展示、十二階下の繁華等、ほどなく男達の欲望の中心に変化するのは、浅草という土地柄、避け難かったようだ。 2018/10/02
いちはじめ
0
凌雲閣こと浅草十二階とそれの建っていた時代について知りたいのならば、必読ものの好著。2002/05/28