内容説明
グローバリゼーションと情報化の時代に戦争は予期せぬ仕方で人々を襲う。空から監視する人道の目、警察化する映像、そして「純粋戦争」へ。コソヴォ空爆開始から停戦までのリアルタイムの記録をもとに、メディア論の奇才が、新世紀に放つ緊急提言。
目次
1 「人権」の名における戦争
2 映像の戦争ではなく、映像の警察が―グローバル情報支配
3 絶対的抑止、そして「純粋戦争」
4 終わりの始まり
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひろし
1
示唆に富む部分が多かったのだが、非常に難解で読みにくかった。コソボ紛争を中心に、戦争の変容について語られている。戦争の警察化、NATOの変容、抑止の変質など。絶えざる兵器システム開発の相互作用こそが抑止を支えつつある。下部構造を無力化することが、戦争の目的となりつつある。戦争とは敵と味方の関係ではなく、システムとノイズの関係なのだ。2014/03/11
★★★★★
1
「速度の政治学者」による、コソボ紛争についての断想。一望監視装置の概念を援用しながら、情報を巡る新しい戦争の形を考察する本です。微妙に専門外なのでこのくらいで止めときますが、なかなかエキサイティングな内容だと思いました。2009/06/16
Mealla0v0
0
原版1999年、邦訳2000年。冷戦以後の戦争を、「グローバル情報支配」と「警察化」の概念によって捉える。領土や国民国家の主権よりも大切とされる「人権」という普遍的価値なるものの為に遂行される戦争。それは交渉の余地はなく、敵の殲滅が絶対目標とされる。そのために、人道主義的介入が世俗的聖戦として実行される。他方、戦争が情報化することにより、この情報戦争を制圧するシステムが構築される。人工衛星やリアルタイムでの情報処理やデータ解析などによって、グローバル情報支配を築く。情報は非致死性兵器、純粋兵器なのだ――2017/05/23
ハンギ
0
100ページちょっとの本だけど、中身はいろいろ凝縮されていて読み応えがある。むしろ凝縮されすぎて消化不良を起こした。ヴィリリオさんという学者がアメリカやNATOによるコソヴォ空爆についていろいろと分析してみた本です。人権という口実で始まった戦争だけど、むしろ現場では被害が拡大化し市民にも被害者が出る。その様はまさしくポストモダンの戦争だ。最後にヴィリリオはそのようなことを指摘する。情報戦争と警察化する戦争とは実は表裏一体なんだろうなと個人的には思った。2012/02/07