内容説明
靴底を通してのぼってくる、あの舗石の感触は、私に生きることの力を教えてくれる―。遠い石造りの街で出会った人々の思い出に寄り添いながら、ヨーロッパ精神の真髄を描く、著者、最後のエッセイ。
目次
リヴィアの夢―パンテオン
ヴェネツィアの悲しみ
アラチェリの大階段
舗石を敷いた道
チェザレの家
図書館の記憶
スカッパ・ナポリ
ガールの水道橋
空の群青色
ファッツィーニのアトリエ
月と少女とアンドレア・ザンゾット
サンドロ・ペンナのひそやかな詩と人生
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gotoran
49
久方振りの須賀敦子氏の作品。ヨーロッパと日本の7間で精神性を真摯に追い求めた一人の女性と云う著者最後のエッセイ集。パンテオンの郷愁、ベネティアの悲しみ、ニッコローの図書館など…イタリア・フランスの建築物・道路・水道橋・階段・彫刻・絵画などについて、語られている。著者固有の静謐な文章で綴られ、著者の持ち味が如何なく発揮されていた本作品を愉しむことができた。2022/10/27
燃えつきた棒
42
もうずいぶん慣れ親しんだはずの須賀さんの文章が、今回はなぜかすんなりと頭に入ってこない。 舗石を敷いた道を革靴で歩いているように、でこぼこしていてなんだか読み難い。 読み始めてしばらく、そんな違和感を感じていたが、やがて懐かしい哀しみに出会うことができた。/2023/09/18
aika
42
石畳の硬い感触、教会の構造、詩や絵画などヨーロッパの思考に惹かれ、悩み、数十年という長い時間が経ていく中で、須賀さんの思考が再構築されていく過程を知れました。今まで読んできたどの作品よりも難しく、言葉に率直さを感じます。「二十五年がすぎて、枠と細部を、貴重な絵具のようにすこしずつ溶かしては、まぜることをおぼえたいま、私は、ようやく自分なりの坂道の降り方を覚えたのかもしれなかった。」戦後の貧しさが残るパリ、愛したイタリア、そして戻ってきた日本、生きてきた全ての時間が須賀さんの中に息づいていました。2020/09/13
Mishima
36
イタリアという国があまりにもわたしには遠くて、理解が及ばない本でした。でも、好きです。須賀敦子さんは、やはり良いです。12編中最後にあった文中の詩が心に響いたのでメモとして。 「ぐっすりとねむったまま生きたい 人生の優しい騒音に囲まれて。」サンドロ・ペンナ。2018/08/15
tom
22
須賀敦子の連続読み。どういう経過をたどって彼女という人ができ上がったのかを知りたくて、読み続けているのだけど、今のところぼんやりとしすぎている。少々疲れてきた感じもある。もう少し読んでみるのか、ここらで一休みするのか、ちょっと思案中。一休みしたら、そのまま読まなくなってしまう可能性も大きいからなあ。どうしよう。2022/02/07