出版社内容情報
戦中期、戦時総動員体制のもとで多くの民間人を国家的暴力へと駆り立てた〈従軍〉は、現代社会にどのようなかたちで息づいているのか。「報道」「女性」「宗教」などを切り口に、人々を直接的・間接的に戦場へと動員する〈従軍〉の論理を解明する。
第1章 グローバルな世界と〈私たち〉の従軍 加藤哲郎
1 「敵性分子」が公言されるとき
2 グローバルな世界と「帝国」の支配
3 情報戦時代の「従軍」
4 もうひとつの世界へ
第2章 従軍のパラドクス――「勝利のための報道」と「真実のための報道」 金平茂紀
1 ボディガード同行取材の是非
2 軍と報道の「ギャップを狭める」
3 「従軍記者」の同質性
4 近未来の戦争報道の悪夢
第3章 戦争、メディア、ナショナリズム 橋本 晃
1 メデイアとナショナリズム
2 メデイアと戦争
3 「われわれの戦争」と従軍記者の熱狂
4 全面戦争から限定戦争へ
5 軍事革命と従軍記者の消滅へ
6 デジタル市民社会とメディアの近未来
第4章 戦争報道を見るテレビ視聴者の「責任」について 和田伸一郎
1 最初の問い
2 死体映像の欠如の意味
3 「メディアはメッセージである」
4 映像を見る者の責任とは何か
5 隣人への無関心
第5章 戦争報道写真―――その歴史的変遷と意味 笠原美智子
1 従軍写真の始まり――クリミア―アメリカ海軍横須賀基地の事例から 宮西香穂里
1 アメリカ軍基地での妻たちの世界
2 夫が不在中の妻たちの生活
3 妻たちの戦争
4 日本人として、軍人の妻として
第10章 従軍建築史家たちの夢――大東亜建築史序説 村松 伸
1 脱亜の建築進化論
2 光化門よ、光化門よ!
3 兵士たちの民家調査
第11章 従軍体験を振り返って 野嶋 剛
1 従軍取材
2 アメリカ兵との距離感
3 情報操作か
4 従軍取材の利点と限界
5 戦争と報道
6 従軍が終わって
内容説明
「われわれ」を守るために「人間」が殺し/殺されていくという矛盾をはらんでいる戦争。過去、前線/銃後の境界を改変しつづけることで成立していた戦時総動員体制のもとで多くの民間人を国家的暴力行為へと駆り立てた“従軍”は、「戦時下」のいまを生きる私たちにどのような内実をもって立ち現れるのか。兵士の後ろから戦場を伝える記者や写真家、前線で「正義」を語る牧師、在日アメリカ軍基地で軍人の夫の帰りを待つ妻、ブラウン管に映る「死体のない戦争」を見る“私たち”…。職業軍人=従軍兵士にとどまらず、すべての人々を直接的・間接的に戦場へと動員する“従軍”の多様な形態を照射して、日常のあらゆるシステム内で作動する暴力の論理に抗するための視座を明らかにする。
目次
第1章 グローバルな世界と“私たち”の従軍
第2章 従軍のパラドクス―「勝利のための報道」と「真実のための報道」
第3章 戦争、メディア、ナショナリズム
第4章 戦争報道を見るテレビ視聴者の「責任」について
第5章 戦争報道写真―その歴史的変遷と意味
第6章 痛みなき動員へのいざない―戦争とミュージカル映画
第7章 従軍牧師―あるいは越境する聖職者
第8章 従軍と「女性」
第9章 従軍する日本人妻―アメリカ海軍横須賀基地の事例から
第10章 従軍建築史家たちの夢―大東亜建築史序説
第11章 従軍体験を振り返って