出版社内容情報
転換期の文化・思想には、どのような現代性をもった言説空間が横たわっているのか。「総力戦」「宣伝」「観光」「メディア」「口演」「放送」の6つの視点を切り口に、メディアと身体が重層的にかかわりはじめた時代における社会の深層意識の変容を解読する。
第1部 一九三〇年代という問題
第1章 三〇年代論の系譜と地平 吉見俊哉
1 「転向/抵抗」の三〇年代を超えて――一九五〇年代の三〇年代論
2 生活文化としての二〇、三〇年代――一九六〇年代の三〇年代論
3 世界的同時性としての二〇、三〇年代――一九七〇、八○年代の三〇年代論
4 総力戦と超克するモダニティ――一九九〇年代の三〇年代論
5 本書の視座と構成
第2部 一九三〇年代を読みなおす
第2章 一九三〇年代と「戦争の記憶」――集合的記憶のメディア論的検討 野上 元
1「日露戦争の記憶」と総力戦の戦争学
2 総力戦体制の構築と書類・書物の空間
3 総力戦体制の完成と「経験の貧困」
4 書物という楽園、再び「夢」と化す総力戦
第3章 プロパガンディストたちの読書空間 難波功士
1 宣伝理論
2 宣伝組織・文化政策
3 宣伝と防諜
4 宣撫工作
5 総力戦論
6 「宣伝参考文献」の言説空間
第4章 「二つの近代」の痕跡――一九三〇年代における「国際観光」の展開を中心に 高 媛
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内容説明
危機の時代に繰り返し参照されてきた「1930年代」。さまざまな知が戦争に向けた動員体制にのみこまれていったファシズムの時代として、この時代標識は「歴史は繰り返す」式の問題設定を引き出してきた。しかし、この時代の言説とメディアに堆積した生きた経験のなかに分け入っていくとき、どのような地平が開かれていくのだろうか。30年代のメディアと身体のありようについて、「総力戦の思想」「宣伝の思想」「観光の思想」「メディアの思想」「口演の思想」「放送の思想」という6つのテーマに焦点をあてて、われわれ自身の経験や実践、社会的リアリティの変容を考察し、現在を歴史的・立体的に把握する手がかりを探り出す。
目次
第1部 1930年代という問題(1930年代論の系譜と地平)
第2部 1930年代を読みなおす(1930年代と「戦争の記憶」―集合的記憶のメディア論的検討;プロパガンディストたちの読書空間;「2つの近代」の痕跡―1930年代における「国際観光」の展開を中心に;メディア論的ロマン主義―横光利一と中井正一、メディアの詩学と政治学;「新作」を量産する浪花節―口演空間の再編成と語り芸演者;「耳」の標準化―認定ラジオという逆説)
著者等紹介
吉見俊哉[ヨシミシュンヤ]
1957年生まれ。東京大学社会情報研究所教授。専攻は社会学・文化研究
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