感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Yusuke Oga
22
テーマもないのに詩を書いちゃうし家もないのに家出をしちゃう、という実に自分勝手で乱暴な「叶えてやろうじゃないか」という詩が訳もなく好き。何度読んだのかわからないくらい、読む度にぜんぜん違うものに見えるのは、こちらの気分によってどうとでもとれる「どんとこい」的な器量の大きさがあるからなのかと思うけど、まあ、そんなことはどうでもよくて、景色、あわよくば気色で僕も生きていきたいなあなんて思う。「知性かなぐり捨てる」ってのが大事なんだという著者の言葉も忘れ難い。2014/10/06
Tonex
17
現代詩は苦手。最初からさっぱり意味がわからない。ネットで解説のようなものを調べてみたら、涌井隆「荒川洋治の詩 :『娼婦論』・『水駅』を中心に」という論文があったので読んでみた。読み方のコツが少しわかったような気がする。2016/02/25
misui
10
鋭い方法意識で現代詩なるものを問い直した詩人。技術で書かれる詩はたしかにそれまでの詩とはまったく趣が違うし、何が書かれているのか読み取るのが困難なことも多い。しかしそれは散文では不可能な詩の表現であって、「制度」が切り捨ててきたものでもある。そのことが了解されれば、この詩人の精緻な技術の背後には、自らの弱さの自覚や、葬られたものへのシンパシーが感じられる。臆病さや優しさと言ってもよくて、この詩人のおかげでずいぶんと詩の世界が開けたのだろうと思う。詩も良かったがエッセイが面白かったので今後追ってみたい。2015/02/18
MIU
0
水駅の中に、初期中世のひかりという作品があり、そこに到って小難しいけど無視できない諧調(荒川洋治風)を持つ娼婦論7篇が分りかけた。これ情況論と男女論の暗喩でしょう全部。最初から最後まで暗喩なので言葉のすばらしさにしか目がいかなかった。情況と性のあれこれをこの詩人は性別を自在に超えた視点から地図を視るように俯瞰し修辞する。修辞のために修辞する荒川修辞。って詩群なら、そりゃ分らなくて当然。「暗喩の意味を変えた」とされるのも無理はない。暗喩の為の暗喩を駆使しての物語、キルギス錐情はその方法の開始宣言。2021/11/01
sakauenakano
0
荒川洋治の初期の詩集をまとめたもの。中でも醜仮廬が印象的。『「最終日のきょう」 十九歳のわたしに帰宅、修学をきつく言い渡した九十一歳のわたしは 美声の記録係を帰したあと位置につき』(黒船)や『はじめて上になり いきものの軽さをあつかった』(春の野原の黒い島)など鮮烈で想像力を掻き立てる言葉がこれでもかと並ぶ。2013/11/17