感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナーキー靴下
61
昔から、鮎川信夫の詩を読むと、頭の中に松本零士ワールドが広がる。ていうかキャプテン・ハーロックで…。今回の再読でも変わらず、しかし後半の「詩論・自伝」で鍵を見つけた。鮎川本人による「日本的宿命を背負って気軽で陰鬱な異邦人のやうに生きようとする我々」という言葉、こうした自己像にハーロック的な印象を感じるのかなと思う。私にとっては最上級の格好良さだが…真面目な話、戦後詩人としての在り方、戦争自体を美化するわけではないが犠牲となった個人には敬意を持ち、過去を闇雲に否定することなく背負って歩く様は凛としている。2021/05/09
マリリン
38
「テロルの伝説…」や「桐山襲全作品」で触れていたので読んだ。表現のしかたは異なるものの、桐山氏同様時代の流れの中で埋もれつつある社会を詠んでいる。それが詩人の役割でもあるかのように。「死んだ男」は素晴らしい作品で、桐山氏が影響を受け、作者の意志を汲み取り自身の作品に反映させたのではと感じた。気になったのは(視点を変えれば別の見方もできるが)使いたくない言葉、表現?(見たくない情景)が何度か出てきた事。言葉は情景を創る。読む側の感じ方によりそれぞれ違っても。2022/06/20
無識者
7
巧く書こうとか、綺麗に書こうというのがないのがよいと思った。絶対的なものなんてないという出発点から、自分のものの見方をなんとか表現していくようなスタンス。これはなぜか後の世代に受け継がれなかったように思う。若き荒地で田村がエリオットを読んでたおかげで三好が偽物だとすぐわかったといっていたが、これを読んだあとだと技法で着飾った詩がなんか嫌に思えてくる。2019/01/22
しゅん
5
「小説より批評のほうが詩に近い」と考えた萩原朔太郎はやはり冴えていたなとこれ読んで思いました。2020/06/08
まろすけ
5
どちらかというと詩そのものより、日本の詩の変遷における重要人物として気になっていた詩人さん。今回初読み。『意味性の回復』の心意気と、戦争体験からなる哀切が混濁した第三部と第一部の詩群が絶唱。しかしそれ以外の詩は、んー、まあまあ。そもそもの著者の資質として、社会派タイプの才能な感じがする。戦争体験で生じた感情を内的イメージと絡めた詩の方が、なんというか、人為を超えた化学反応が起きている(起こしたのではなく、起きた)。つまりは西脇順三郎さんと真逆で、美的味付けより社会的味付けでの創作がハマるタイプ。・・かな?2020/05/31