出版社内容情報
レバノンの詩人・哲学者・画家である著者が人間の普遍的テーマ…愛、労働、喜びと悲しみ、友情など26項目について深く語りかけている。小型携帯版
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
63
物語は預言者が人々に語りかける形で進みます。語るのは、愛や苦しみ、労働や友情について。作者はキリスト教徒ですが、ここでの神はもっと広く大きなもののように思われます。感じたのは、世界はその大きなものにあまねく満たされ、祝福されているのだということ。喜びも悲しみも善も悪も分かち難くその中にあり、だから自身の内の「無限なもの」の憧憬に向って進んでいけばよいのだというその言葉に、自分の中の全ての善いもの美しいものが立ち上がってくるようで、この静かな高揚を「ひとつの始まりとして」覚えていられればいいなと思いました。2020/09/14
スプーン
40
数々の真理が詩的に語られた本。近いのは、聖書、タゴール。この世の真理を求めるものには良書となり、この世の常識を求めるものには迷書と映ろう。「求めよさらば与えられん」。2019/10/14
いやしの本棚
22
今年は苦しい一年で、振り返りつつこの本を読むと、心に沁みることがいろいろあった。ジブランは難しい言葉を使わず、一見、相反すると思うもの、愛と苦を、喜びと悲しみを分けず、生命、永遠について語る。「苦しみ、それは、あなたの理解を被っている殻が壊れること」確かに今年、「苦」がなければ「愛」について考えることもなかった。今のところわたしにとって愛するというのは、丁寧に素朴に働くこと、本と、本の周りにいる人を大切に思うこと。「愛をもって労働するとき、あなたは自分をつなぎとめる。自分自身に、ひとに、そして神に」2017/12/29
きゃんたか
20
簡潔な言葉で真理を抉り取る様式は箴言のようでもあり、豊饒なイメージに彩られ口ずさみたくなる文章は詩篇のようでもある。神のような一者を希求するものでありながら、喜びと悲しみ、売るものと買うもの、罪と罰の相依相関を呼び掛ける本書をどう定義すれば良いのだろう。宗教を超える宗教。言葉を超える真理。どれも正しいように見えて、いずれもしっくり来ない。それはきっと、言葉によって何を示したとて、所詮、読む者に予め備えられていた信と愛を呼び起こすほか無いからなのか。願わくば、祈りの内、エーテルの中であなたと出遭わんことを。2021/10/11
たけひと
20
本作は100年以上前に、レバノンの15歳の少年が着想した内なる神を謳った稀有壮大な叙情詩である。前半の愛、結婚、子供、施し、労働、喜びと悲しみ、これらについてはとにかくグサグサ胸に刺さりまくる。啓蒙されること間違いなしである。後半は人間がうちに秘める宇宙=神の存在が度々言及され少し理解の範囲を超える。だが読後レバノン史を紐解いてすっと腹に落ちた。多宗派が混在し、争いの絶えないレバノンに於いて、作者は形・理屈は違えど、人に宿る神の存在は唯一無二であることを説きたかったのだと。影響力半端ない貴重な作品である。2020/08/13