内容説明
ポストモダンの最終兵器か。前著『電脳世界』につづき、情報化社会に警鐘をならす話題作。情報の無限連鎖的な増幅がもたらす破局―すなわち情報の「臨界反応」が現代社会を脅かす。
目次
コンピュータ支援自動自殺器械、あるいは「極限の科学」
まなざしのグローバリゼーション
アメリカの世紀―西部開拓と「外観の彼方」としての映画
運命の子羊ドリー
技術的進歩は人間の身体能力を破壊する
セックス=文化=広告複合体
光学的密告時代
抑圧された声―ソフトな言語とハードな映像のジレンマ
宇宙時代の終焉―宇宙空間からヴァーチャル・スペースへ
現在の科学魔術師たちは「生きた大地」を手品で消してしまう〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ecriture
9
90年代、技術の変化によって「空間の終焉」が始まった。情報の爆弾が世界中で同時的に炸裂し、グローバルでヴァーチャルな現実と相対することになった。マクルーハンの世界村化による局地性の減少云々の議論は、デリダの生放送論や宮台のテレクラ論(!)に比べれば質は落ちるが、NYで麻薬の取締まりの難化やライブカメラによるイメージの貧困の補強の指摘が面白い。スティグレールのイメージ論と合わせて読むと良さそう。「トランス・アパランス(超外観)」と「現実」の対立はシミュラークルやスペクタクルに近いが…。ちょっと素朴かなぁ。2013/08/03
nanchara_dawn
1
すごく面白い。本国で出版されたのが1998年なので、取り上げられている題材がクローン羊ドリーのことだったり、クリントンのことだったりと、ちょっと古臭かったりするけれど、それらを切り取る著者のパースペクティブは、時の流れをものともしない面白さを持っている。そして、ここで予言されている「情報化爆弾」は、まさに現在、世界中で炸裂しているように思わされるのだ。2012/07/20
Hiroshi Arai
0
ネットメディア(ていうか技術全般なんだろうけど)を「戦争技術」=「商業技術(広告)」みたいな図式でしつこく説明してうるさい。金太郎あめ。たしかにそういうある種の警鐘を鳴らすことは大切だとはおもうけれど、それだけでは一面的過ぎないか。タイトルだけみれば十分って気がする。環境の変化についていく必要がないおじいさんが、自分の価値観をひとに押し付ける本。2015/01/03
Hiromu Yamazaki
0
情報化による速度の圧倒的上昇は《いま-ここ》から《ここ》という局地性を排除し《遠隔現前の即時性》が支配する社会へと向かわせる。ボードリヤールなど他批評家が述べる論に比べるとやや浅い感があるが、総論として読むと中々21世紀の今を上手く言い当てているという印象。2014/09/16
Yoshi
0
今読むと昨今の様々な事はそのまま言っている感がある。 ネットの情報、遠隔ヴィジョンによるグローバリズムとそのイメージ、実際に存在し相方向に何かを行うというそれは置き去りに、実際に映像を眺めているだけの時間は確かに増えた。 ポストモダンの味みたいなものを感じる本だったが、かといって相対主義的なポストモダンに対する批判を考えるとこの手のは当たりすぎている感がある。 あと、面白かったのは最後の最後でちょろっとでていた演劇の話が面白かった。 最近の演劇は確かに場面は何個も何個もバシバシ切り替わる、、2023/11/07