内容説明
先住民族と認めた「アイヌ新法」施行、文化拠点「ウポポイ」完成の中、宙に浮くアイヌの人々の誇りと願い―。本当の「共生社会」への道筋を考える。
目次
1 「アイヌ新法」と日本政府(演出された民族共生;世界の先住民族とアイヌ;「共生の五輪」と先住権)
2 先住権とアイヌ民族(アイヌの誇りを胸に;アイヌ先住権の本質)
「人間として生きる権利」の回復を求めて―結びに
資料
著者等紹介
モーリス=スズキ,テッサ[モーリススズキ,テッサ] [Morris‐Suzuki,Tessa]
1951年、イギリス生まれ。オーストラリア国立大学名誉教授。専門は日本思想史、日本社会史。北大開示文書研究会会員。著書多数
市川守弘[イチカワモリヒロ]
1954年、東京生まれ。中央大学法学部卒、弁護士。1999年から2002年、コロラド大学ロースクールに留学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ドラマチックガス
7
諸事情で超速読。前半の論考は比較的しっかりと。ウポポイの問題点をきちんと指摘(ウヨさん的なやつではなく)。これは重大な問題です。アイヌ新法に「先住権」という言葉が一回も出てこないという話も。良い視点をいただけました。後半のアイヌの方たちの語りは心が痛くなります。自分が作った息子の墓を壊せと指示するエカシとそれを実行する子。これだけで純文学。読み返したい。2020/11/14
瀬希瑞 世季子
3
新法では、先住権の骨格をなす資源権の一部が認められるのは権利としてではなく、行政府による「特別措置」となっており、中央政府や自治体の長が、アイヌが国有地の山林や河川から資源を採集、収穫することに伝統儀式や漁法などの継承を目的もした場合のみそれを「配慮」するという内容となっている。配慮と言い換え権利を制限し続ける新法は、アイヌの自立拡大のためではなく、文化維持活動や文化事業に対する最終決定権は国家や行政が持っていることから、アイヌに対する国家の権限も任意裁量権の増大、国家によるアイヌ文化の管理の側面が強い。2023/10/08
いたる
0
先住権が欠落した新法や、遺骨返還の問題、東京五輪に合わせて開業したウポポイのあり方などを批判的に論じる。故郷から切り離された樺太アイヌの経験は、北海道アイヌの状況とは同列には語れない難しさがあると改めて思い知らされた 。2021/07/01