内容説明
古代ギリシアではポリスの神殿が「アジール/聖域」と認められていた。それは「平和の湯」とされた浴場・湯屋、さらには温泉(地)と深くかかわってくる。温泉(地)は心身の疲れを癒すばかりでなく、魂を救済し、命をも活かす。平和と戦争の問題を通じて、温泉(地)の持つ存在意義、特性をここに見つめ直す。
目次
第1章 平和な「アジール」としての湯屋・温泉
第2章 温泉地の原風景を求めて―聖なる場の平和
第3章 平和な中立地帯としての温泉地
第4章 戦と温泉発見伝説
第5章 避難行と戦国実利の先に温泉
第6章 戦時の人びとを受け容れた温泉地
終章 逆手にとられる“温泉の平和”
著者等紹介
石川理夫[イシカワミチオ]
温泉評論家。日本温泉地域学会会長。1947年生まれ。東京大学法学部卒業。温泉評論・執筆の傍ら、共同湯、温泉文化史等の研究に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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シン
31
温泉の武人や皇族、動物などによる発見や伝承、温泉の泉質についての話はよく聞いたり、読んだりしますが、日本陸軍の傷病兵や戦時中の学童疎開の場所として温泉か使われていたのは驚きとともに納得でした。また、アメリカの戦後核戦争に備え、ウエスト・バージニア州の温泉のホテルの地下を避難所として準備していたのにも驚き。長野県松代の旧海軍指令部壕跡を思い出しました。アメリカも切迫した状況だったんですね。2016/03/24
茶幸才斎
6
一定の温度を保って自然に湧出し、人体に様々な効能をもたらす温泉は、人類が昔から特別な共有物とみなし、戦時下にあっても敵味方の区別なくアジール(癒しの避難所)性を発揮する場所であった、との主張から、古今の日本と西洋における合戦・戦争と温泉(地)との関わりについて、多数の事例を挙げ考察している本。地震と火山の国に住まい、日々仕事という名の戦場でもがく私も、ときに足が勝手に温泉に向くことがある。湯につかると、あらためてこの国に生きる幸福が肌身に染み、ままならぬ日常をひとまず許容するだけの謙虚さに心が満たされる。2016/02/04
Rieko Ito
1
日本と西洋との温泉関連の歴史、とりわけ戦争とのかかわりについて、アジールの視点を中心に書かれている。冒頭に出てくる、敵も味方も一緒にお風呂というのが、一番面白い。2020/12/21
takao
0
☆聖なる場所であり、アジールであった。 2019/08/03