内容説明
命がけで残した兵事書類について沈黙を通し、独り戦没者名簿を綴った元兵事係の戦後は、死者たちとともにあった―。なぜ、国家は戦争ができたのか、なぜ、かくも精密な徴兵制度が稼働したのか、戦争遂行は上からの力だけではなかった。村の日常から戦場への道のりを追った力作。
目次
第1章 密かに残した兵事書類
第2章 ある現役兵の戦場体験
第3章 赤紙を配る、赤紙が来る
第4章 出征した兄弟たちの戦記
第5章 誰をどのように召集したのか
第6章 兵事係と銃後
第7章 海軍志願兵
第8章 死者たちとともに
あとがきに代えて―白骨街道と赤紙
著者等紹介
吉田敏浩[ヨシダトシヒロ]
1957年、大分県臼杵市生まれ。ジャーナリスト。アジアプレス所属。ビルマ北部のカチン人など少数民族の自治権を求める戦いと生活と文化を長期取材した記録、『森の回廊』(NHK出版)で’96年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nnpusnsn1945
45
滋賀県旧東浅井群大郷村で兵事係をしていた方の資料を元に、徴兵制度や、出征兵士と家族らの模様を描く。招集された者は、概ね第9師団や、福知山連隊に所属された。家族で何人も招集し、戦死者が続出した家族のエピソードもある。軍制度の解説に、軍事援護や慰問袋についての説明もあった。最後の著者がビルマ(フーコン)を訪れた際に、現地での加害について住民から聞かされたようだ。現在ウクライナ戦争でロシア軍が動員されているらしいが、根こそぎ動員とかなり近い状態であると言えよう。2022/10/07
ムーミン2号
10
戦中、兵事係という職が役場にはあり、徴兵検査から赤紙の配達、戦死広報等々を行っていた。ということを知ったのはついひと月ほど前で、その係をしていた方が隠し持っていた兵事記録をもとに著された本。案に相違して、その兵事係の苦悩についてのドキュメンタリーではなく、当時の徴兵の方法(それはそれで恐ろしいほど)、従軍者の記録等々が縷々綴られた書であった。期待していたものとは異なったので個人的には少し残念。2021/01/10
takao
1
ふむ2022/05/18
rubyring
1
「村役場で兵事係を務め、敗戦後命令に背いて資料を保管していた105歳老人の体験を中心に、国が戦争を行うとは国民にとってどのような体験なのかを伝える」2017/03/01
カステイラ
0
赤紙(召集令状)が突然やってくる立場の人の話はいろんな所で聞くけど、その対極には綿密な準備をした上で赤紙を届ける人たちもいるわけで、そういう人たちの話はほとんどない。その立場の人である「兵事係」を取り上げた貴重な一冊。一枚の赤紙が届くまで、届いた後を丹念に書いた良書。2015/02/11