内容説明
いつの時代でも大きなおっぱいが好まれていたわけではない。70年代にはユニセックスで華奢な体つきこそがファッショナブルであり、80年代のAV業界でさえも胸の大きなAV女優は人気を得ることができなかった。ようやく「巨乳」という言葉が誕生し、一般的に普及したのは1990年頃になってから。それまでは「ボイン」「デカパイ」「Dカップ」などと呼ばれていた。江戸時代から開国、敗戦、経済成長を経て現在、社会の「大きなおっぱい」の受け止められ方は、時代を反映して変わっていく。なぜ変わっていったのか。その理由と全貌をあきれるほどの調査で明らかにした革命的論考。
目次
序章 原宿に日本初の巨乳専門ショップがあった
第1章 巨乳をめぐる世界史
第2章 おっぱいは性的対象ではなかった
第3章 グラマーの襲来
第4章 ボインの時代ナインの時代
第5章 デカパイからDカップへ
第6章 巨乳の誕生
第7章 それは爆乳と呼ばれた
第8章 21世紀の巨乳たち
著者等紹介
安田理央[ヤスダリオ]
1967年埼玉県生まれ。ライター、アダルトメディア研究家、漫画原作者。美学校考現学研究室(講師=赤瀬川原平)卒。主にアダルトテーマ全般を中心に執筆。特にエロとデジタルメディアとの関わりに注目している。AV監督としても活動し、80年代よりモデルプランツ、野獣のリリアンなどのバンドで音楽活動も活発に行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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徒花
250
献本で当選。生物学や社会学的な内容ではなく、あくまで「日本のメディアはこれまで女性のおっぱいをどのように表現してきたのか」ということに焦点があてられたメディアの変遷の歴史と言った方が正確。私が若いせいもあるかもしれないが、「巨乳」という言葉が一般化した歴史が思った以上に浅く、つい最近まで大きなおっぱいがマニア向けのものだったことが驚きだった。仕方ない部分もあるが、具体的な事例や事実関係の説明が多くて、個人的にはもうちょっと著者なりの解釈や分析、主張が欲しかった。2017/12/28
きいち
34
このテーマ、かつ今もエロメディアの現場にいる著者なのに、「上品さ」が感じられるのはどうしてだろう?歴史的に引いた視点からの出発というのは一因。江戸時代の日本では性的なものではなく春画での描写も淡泊、洋画で大きさが魅力として描かれるようになったのも戦後以降、エロの作り手もマニアのみ。90年代以降の見る側との共闘で今がある。日本人女性の体形の変化も同時って、へえ、そんなに変わってたのか…。◇決して事務的な書き方じゃなくて、それこそ誰に魅力を感じたとか当事者語り、自己客観視が強いのがよいのかな、貴重な書き手だ。2018/11/20
おかむら
27
大きなバストがどう呼ばれてきたのか、グラマー→ボイン→Dカップ→巨乳→爆乳と時代を追って検証。シモ系文化史楽しい! 江戸や明治までは日本人はあんまり胸に興味なかった、とか、Dカップの日米差、とか、胸の大きい女性は頭悪い神話、とかいちいち興味深いわー。戦後公開された伊映画「にがい米」主演女優シルヴァーナマンガーノの「凄まじい肉体迫力! 女の体臭と官能にぶち抜く」ってキャッチコピーがすげえ!さらにニックネームは「イタリアの原爆女優」…。昭和ってすごい時代だったのねー。画像が無いのでスマホで調べながら読みました2019/02/28
梟をめぐる読書
20
女性の「巨乳」が男性たちの間でどのように受容され消費されてきたかを、アダルトメディア史を中心に繙く。この手の本にありがちな「巨乳の文化史」的なものを期待して手に取ると生々しいAV女優や作品名の羅列に面食らうことになると思うので、その点は注意。とはいえ「江戸時代の日本人にとって乳房は性的対象ではなかった」という基礎的事実を踏まえつつ、いかに女性の胸が性器として「発見」されていったかという流れはやはり興味深くもあり。「巨乳」というアイコンでさえ、その価値は普遍的なものではなく時代の波に翻弄され続けたのだ。2018/02/05
ステビア
16
グラマー、ボイン、デカパイ、Dカップ、巨乳、爆乳…おっぱいをめぐる言説は目まぐるしく変化してきた。2020/09/06