内容説明
旧版『暇と退屈の倫理学』は、その主題に関わる基本的な問いを手つかずのままに残している。なぜ人は退屈するのか?―これがその問いに他ならない。増補新版では、人が退屈する事実とその現象を考究した旧稿から一歩進め、退屈そのものの発生根拠や存在理由を追究する。新版に寄せた渾身の論考「傷と運命」(13,000字)を付す。
目次
序章 「好きなこと」とは何か?
第1章 暇と退屈の原理論―ウサギ狩りに行く人は本当は何が欲しいのか?
第2章 暇と退屈の系譜学―人間はいつから退屈しているのか?
第3章 暇と退屈の経済史―なぜ“ひまじん”が尊敬されてきたのか?
第4章 暇と退屈の疎外論―贅沢とは何か?
第5章 暇と退屈の哲学―そもそも退屈とは何か?
第6章 暇と退屈の人間学―トカゲの世界をのぞくことは可能か?
第7章 暇と退屈の倫理学―決断することは人間の証しか?
著者等紹介
國分功一郎[コクブンコウイチロウ]
1974年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。高崎経済大学経済学部准教授。専攻は哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
167
「暇」と「退屈」の奥が深過ぎて、なんだか感動すらしてしまいました。これは良書だと思います。しかし、ハイデッガーとファイトクラブが同じ土俵に上がるなんてホント凄いです。2021/07/14
ひろき@巨人の肩
126
「暇と退屈の哲学」とは幸福論。人類は「遊動」から「定住」を強いられた際に定住革命が起こる。トイレや掃除、埋葬など発明したが「暇」の対処法が見つかっていない。「退屈」は資本主義が「余暇」を管理し始めたことで庶民に拡大。消費社会の奴隷となり「何となく退屈」と感じる。後半は「退屈」の発生機構に着目。前半との繋がりが理解できなかったので自分なりの考察。動物の感覚が形成する「環世界」を人間は言語により認知し移行できる。認知した環世界が知識、移行できる環世界が習慣、そのギャップが「疎外感」となり「退屈」を生む。2021/07/21
おたま
111
こんなにも豊かになったのに、なぜこの豊かさを喜ぶことができないのか?この本はそのような問いから始まっている。人類が定住生活を始めた頃にまで遡って、暇や退屈について考えていく。これまでの様々な思想家の思考を経巡り、暇について、退屈について、自由について、充足について考えていく。著者は、この本に書かれていることを順に読むことが、すでに<暇と退屈の倫理学>の実践になっていると言う。だからぜひこの本を読んでみてほしい。倫理学と言っても決して難解ではなく、國分さんの真っすぐに突き進んでいく熱い思いを感じるだろう。2020/10/05
とも
94
とても面白かった。 オーディオブックだったのでわかりにくい部分もあったので、 機会があったら本を買って、じっくり読んで学びあじわいたい。 消費でなく浪費したいなぁ。2021/07/27
(haro-n)
77
一気に読んだ。「定住革命」の話やユクスキュルの「環世界理論」、ハイデッガーの「退屈論」は私には新しい内容だったので興味深く読めた。森村進氏の『幸福とは何か』を読んで分析哲学のアプローチに感心したため、この本でも「暇」や「退屈」について厳密な分析をしているのかと期待したが、話の規模が大き過ぎた。暇と退屈を区別するのはよいが、退屈にもバリエーションがあると思う。ハイデッガーの退屈論の第一形式と第三形式を筆者が同じものと処理してしまうことに納得が出来なかった。幾つか納得出来ない点があるので纏めておこうと思った。2019/03/15