内容説明
一冊の古本には、前の持ち主によって刻まれた、無数の「痕跡」が残されています。そんな「痕跡本」は、物語の宝庫。本と人との、誰も知らない秘密やミステリーが隠れています。本書は、世界初となる「痕跡本」の本。稼代の痕跡本コレクターである著者が、めくるめく痕跡本の世界へと、あなたを誘います。
目次
第1章 真夜中の実験室
第2章 俺読書
第3章 秘密
第4章 本との絆
第5章 謎
痕跡本千本ノック
実践篇 五っ葉文庫流痕跡本の探し方
著者等紹介
古沢和宏[フルサワカズヒロ]
1979年滋賀県生まれ。「古書五っ葉文庫」店主(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
pino
130
古本の痕跡から、ここに至るまでのストーリーを推測する著者の妄想文が面白い。ホラー漫画の刺し傷やグラビア雑誌の切り抜きの痕に、ぞぞっ。「まだらの卵」の表紙の少年の鼻の穴が無傷だったのが救いだ。万年筆で書かれた一文は味がある。達筆だし。私が出会った本には、選挙の投票券や、財産差し押さえ証が挟まっていた。図書館の「本が泣いています」コーナーのシリーズ本、数十冊のタイトルの横には「済」の文字が。一番ビビったのは、家にあった婦人雑誌。子供は厳しく育てるべきだ。の質問の「はい」に力一杯の○の痕跡。かあさん、怖いよ・・2012/11/17
kinkin
69
図書館などで線を引いたり、書き込みをした本を時々見かける。公共の本を私物化する行為には嫌な思いをする。この本はそんな書き込みや栞替わりにレシートやメモなどを挟み込んだ、前の持ち主の痕跡が残る本を解説したもの。痕跡本というネーミングはいいと思う。私は嫌いじゃない、いや好きなほうだ。特に挟み込まれた栞やちらしを密かに集めている(もう密かではないね^ ^)本書の冒頭で恐怖漫画家日野日出志の漫画本が紹介されていた。この本に残る痕跡は、ホントに怖い。ぜひ読んでいただきたい。2015/10/01
あじ
63
書き込み、挟み込み、傷、汚れ…本にとってマゾヒズムを感じる、痕跡なのではないだろうか。持ち主であった人が羞恥行為(主観)に至った経緯を推測し、著者が全力で練り上げて語る。真面目に考察する姿が私の失笑を誘うのだが、かなり的を射ているかもしれない。私は宝くじを挟めたままにしたことがある。それを発見した人は換金しただろうか。ユニークな視点の“すすめ”でした。本を痛ましく扱う事に、抵抗がある方には向かないと思います。2015/05/10
へくとぱすかる
54
古本には元の持ち主の名前が書いてあることがある。それはいやだなぁ、と思ったこともしばしば。しかし視点を変えてみたら、それはモノとしての本の経歴で、歴史でもあるんですね。「残念な本」こそ別のおもしろさを発見できるというところに、価値観を再点検させられます。だから古本は魅力的です。2013/11/10
奥澤啓
51
著者の話をラジオで聞いたことがある。「あきしも、あきしも」と聞きなれない言葉をさかんに使うのでハテナと思ったのだけれど、「秋霜」(しゅうそう)を「あきしも」 と誤読しているのであった。書き込みなどがある古本をことさら痕跡本などと特化したところで、古書に親しんでいる人には当然のこと。それより漢字をきちんと読んでほしいと思った。書き込み本は何冊も持っている。豆粒のような筆字で出征前の辞世の歌らしき書き込みがある戦前の翻訳書。渡辺一夫の署名がある仏文法書。フランス文学者前田陽一の献呈署名本など。みな大切な本だ。2015/02/12